生きるは作業のつみかさね

作業をすれば元気になれる!作業療法ノススメ。

末期がんでも働くこと。生きることは働くこと。

 

医療者と職場の担当者にある認識のズレ

がんと就労の問題でとても大事なのは、患者さん本人を仲立ちとして、主治医と職場がよくコミュニケーションをとり、正確な情報を、過不足なく共有することだと思います。

ところが、一般的に医療者は、患者さんの病気と直接関係のない仕事のことを根掘り葉掘り聞くことをためらいがちです。たとえ聞いたとしても、医療者のほとんどは医療機関でしか働いたことがありませんから、社会一般の働き方を必ずしもよく分かっていません。一方、職場関係者も、個人情報である病気のことを詳しく聞くことをためらいがちです。互いに躊躇(ちゅうちょ)していては、よいアイデアは出ませんよね。

また、職場関係者は、主治医は患者について何でも分かっていると考え、「職場ではどう気を付ければいいですか」と、就業上の配慮を問い合わせてきます。でも、アドバイスをするには、患者さんご本人の仕事の内容や職場のルールなども知る必要がある。さらに、職場関係者と情報を共有するにあたっては、患者さんご本人が同意していることが前提です。情報は、医療者が患者さん本人に説明している範囲にとどめる必要もあります。主治医と職場のコミュニケーションは、そういう注意を払いながらの双方向の情報交換だと思います。

そこで橋渡しができるのが患者さんご本人ではないでしょうか。治療のことと、職場のこと、両方を一番よく分かっているのはご本人。患者さんがご自分の状況をよく理解し、職場に説明できると、職場から支援を引き出しやすくなります。自分はどんな病気で、これからどういうスケジュールで治療するのか。予想される副作用やおよその期間はどうか。そのあたりを職場と共有できれば、その情報をもとにして職場も対応しやすくなりますよね。

働き方を考えるために必要な医学的状況を医療者に聞く

病状や治療について、ご自分が仕事をする上で心配事があったら、遠慮なく医療者に聞いていただきたいです。治療で起こる副作用には個人差がありますが、ある程度は予想できますから。

例えば、トイレが近くなるのなら、「通勤で1時間電車に乗るけれど大丈夫でしょうか」など、自分の仕事への影響を理解するために主治医に聞いてみる。抗がん剤治療をするのに休職するか迷うのであれば、外来治療で乗り切れる人がどのくらいいるのか、聞いてみる。1クールやってみて副作用の出方を見てから休職を考えたらどうかとアドバイスされ、思ったほどつらくなかったので結果的に入院しなかった患者さんもいます。

医師に質問しにくかったら、看護師や薬剤師など、いろいろな医療者をつかまえて遠慮なく聞いてみてください。みんな忙しく見えますが、どんな医療者も患者さんの役に立ちたいと思っています。病院で働く多職種の医療者が、それぞれの技量を生かして患者さんの仕事の支援をしていけるよう、医療現場も一層取り組まねばなりません。

配慮してほしいことは患者本人から伝えよう

もし職場に分かってもらいたい事情や、配慮してほしいことがあるなら、ご本人はどこかで覚悟を決めて状況を伝え、配慮を引き出したほうが、長期的には心身ともに楽ではないでしょうか。

何も言わなくてもうまく察してもらって配慮を得るというのは、残念ながら現実的ではないと思うのです。

誰だって言いにくいですよね。言いにくい病気の話だからこそ、先の「話をしやすい職場の雰囲気づくり」が欠かせないのです。

 

働く意欲、能力のある人を辞めさせたくない

がんと仕事の両立が当たり前の社会に

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