がんになっても仕事は辞めないで
日本では年間約100万人が新たにがんと診断され、その3割は15~64歳の就労世代だ。
医療技術の向上で、がんになっても治療を続けながら働くことが可能になってきた。
がん経験者の声をくみ上げ、働きやすい環境を整備する動きも出始めている。
専門家は「がんと診断されても仕事を辞めず、両立の道を探ろう」と呼びかけている。
治療と仕事を両立する上で困難だったこと
がん患者の就労と治療の両立支援は、12年に決まった国の第2期がん対策推進基本計画に明記され本格的に始まった。
がんと診断されると精神的なショックは大きい。
働いていると「治療に専念しなければ」と思い込み仕事を辞めてしまうケースがよくあった。
前立腺がんや乳がんなどで5年後の生存率は90%を超え、働きながら治療する生活が可能だ。
早まって退職したことを後悔する人も多い。
国立がん研究センターがんサバイバーシップ支援部の高橋都部長は「がんにかかれば戦力外という紋切り型の発想はやめよう」と強調する。
がん患者が職場や医療機関などと意思疎通を深め、働きやすい環境づくりを目指そうと説く。
一番大きな問題は、医療費の高さや収入減少などの経済面
うまい解決策はなく、上司や人事担当者と相談してできるだけ収入を減らさない働き方を探るのがよいだろう。がんを経験した人ほど仕事の意義を深く考える傾向が高いという報告も多い。
「周辺の従業員にプラスの影響を及ぼす。新たな戦力ととらえ直してもいい」(高橋部長)。企業の側も発想の転換が大切になる。
職場環境の理解も重要だ。がんの種類や進行度、治療法などによって症状や副作用による障害が患者によって異なる。患者本人が医療機関から正確な情報を聞き職場に伝えないと、治療のためでも休みが取りづらいなどの行き違いが起きる。
患者が女性で上司が男性の場合、体調の変化を伝えにくい。個々人の状況に応じた配慮ある仕組みをどう整えるかが問われるだろう。
仕事と治療の両立はがん患者だけに限る話ではない。ほかの慢性的な病気や障害を抱える人にも通じるし、すべての人の働き方の改革につながる。日本が取り組まなければいけない課題だ。
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