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【うつ病】うつ病からの回復。うつ病の作業療法⑤

 

 

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うつ病からの回復。うつ病作業療法

うつ病と運動

うつ病と運動

 現代は、車社会になり便利になった反面、運動不足が深刻になっています。
 平成26年国民健康・栄養調査によれば、20代で運動習慣(1回30分以上の運動を週2回以上)がある人は男性で約19%、女性は約10%、30代では男性約13%、女性約10%という数字になっています。
 人生で最も活動的であるはずの年代において、ほとんどの人が運動習慣を持っていないのは残念なことです。

 

うつ病の予防
 というのも、日ごろの運動は、ストレスをやわらげ、うつ病リスクを減らします。
 たとえば、アメリカの大学卒業生約1万人を長期間調査したところ、387人がうつ病を発症しましたが、卒業時に身体活動が多い者やスポーツ選手のうつ病発症率は身体活動がとぼしい者と比べて低かったという報告があります(Paffenbarger et al, 1994)。

 

運動療法
 さらに運動は、うつ病の予防だけでなく、治療にも有効であることがわかってきました。
 Cochrane databaseという権威あるデータベースに登録された最近の報告でも、うつ病に対する運動療法は、軽度~中等度の効果があると報告されています。
 うつ病運動療法のパイオニアであるブルメンタールという研究者のグループによれば、運動療法を16週間受けた患者群と抗うつ薬で同じ期間治療された患者群、プラセボ(偽薬)で治療された患者群を比較したところ、運動療法を行った群と抗うつ薬治療群は、プラセボ群に比較してうつ病寛解率が高く、運動療法抗うつ薬の効果はほぼ同等であったと報告されています。
 さらに、運動療法抗うつ薬によってうつ病がいったん改善した後の10か月後の再発率を比較すると、運動療法を自宅で続けていた者の再発率は、薬物療法を続けていた群の再発率より有意に低かったという報告もあります。
 つまり、運動療法で身に着けた運動習慣を続けていると、再発予防になることが示唆されます。

 

休息の本来の意味
 日本では、うつ病になると「休息」を勧められることが多いため「運動するのは治療によくないのでは?」と思われた方もいるでしょう。
 しかし、この休息の本来の意味は、「ストレスのかかることから離れる」ということであって、「ベッドで安静にしていなさい」ということではありません。
 うつ病における休息の重要性をはっきり示したのは笠原嘉先生ですが、有名な「小精神療法」の第二原則には、「できることなら、早い時期に心理的休息をとるほうが立ち直りやすいことを告げる」(笠原嘉著『軽症うつ病講談社現代新書より)と書かれています。
 ストレスのかかる職場でうつ病になったのなら、しばらく休職する、衝突の多い人間関係があるのなら、そのような人間関係から離れる。
 心理的休息をとるというのはそういうことです。
 日本では、この「休息」という言葉だけがひとり歩きして身体も休ませたほうがよいというふうに定式化されてしまった可能性があります。
 しかし、長期間身体を休息していると、運動不足によるメタボリック症候群や糖尿病になってしまう方も少なくありません。これでは、うつ病を治すどころか、悪化させてしまいます。

 

実際の運動療法
 海外での運動療法としては、週に3~5回程度のウォーキングやジョギング(1回40分程度)やエアロビクスやダンス(1回20分~1時間)などが多いようです。
 筆者は、患者さんに自宅近くでのウォーキングを勧めています。歩数記録用紙を渡して診察時に歩数を報告してもらっている方もいます。
 最初は1回に5~10分のウォーキングで開始し、1週間ごとに5分ずつ長くして、最終的に40分のウォーキングを継続できるようになることをめざします。
 カナダのうつ病治療ガイドラインには、軽症~中等症のうつ病に関する運動療法(ただし薬物療法などの増強法として)の有効性が明記されています。
 日本のガイドライン(日本うつ病学会)では、運動療法は行われることがあるものの、確立した治療法とはいえないとされています。
 しかし、運動はやりすぎない限り、身体にも脳にもよい効果を与えることは明らかです(心不全などの重篤な内科疾患をもっている方は例外として)。
 うつ病の治療にとどまらず、一生の健康のことを考えれば、運動は積極的にやるべきでしょう。

 

www.comhbo.net

 

ΓTMS(経頭蓋磁気刺激法) 

 rTMSはrepetitive Transcranial Magnetic Stimulationの略で、日本語にすると反復経頭蓋磁気刺激(はんぷくけいずがいじきしげき)と言います。rTMSを用いると、磁気エネルギーを使って脳内の神経細胞を人工的に働かせることができます。TMSでは、専用のコイルを頭にあてて、そのコイルに瞬間的に高電流を流すと、磁場が生まれます(ファラデーの電磁誘導)。この磁気エネルギーが脳内の局所に(渦)電流を誘導し、特定の神経細胞群が電気的に刺激されて活動します。つまりTMS装置からの電気エネルギーがTMSコイルで磁気エネルギーに変換され、さらに脳内で電気エネルギーに再変換されて神経細胞に伝わるのです(図1)。頭蓋骨の外から脳を刺激する場合、磁気刺激は電気刺激よりもエネルギーが格段に伝わりやすいため、弱い刺激強度で効率よく局所を刺激することが可能となります。

http://seishin.kanagawa-pho.jp/treat1/images/img_rTMS01.jpg


図1

 TMSを反復的(repetitive)に行うと、大脳皮質の興奮性が変化して、刺激が終わった後も1時間程度刺激効果が続くことが分かっています。このことを神経可塑性(しんけいかそせい)と言い、「脳システムの柔軟性」を支える仕組みと考えることが出来ます。TMSを数百回から三千回程度繰り返すと、この神経可塑性を物理的に引き起こすことが出来ると考えられています。うつ病のrTMS治療では、3,000回刺激しますが、40分近くの時間がかかります。さらにこうした反復刺激を週に5日程度繰り返して、4週間から6週間ほどすると刺激の効果は脳内に定着し、治療効果(抗うつ効果)が得られると推測されています。つまり、rTMSは神経可塑性という我々に備わっている生物学的特性を活かした治療法ということができるのです。しかしrTMSの脳内メカニズム(図2)は未だに不明なところが多く残されており、今後も研究を継続する必要性があります。

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図2

効果と安全性

 反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)療法は、パルス磁場による誘導電流(渦電流)で特定部位の神経細胞を繰り返し刺激して、うつ病によるうつ症状を改善させる治療法です。抗うつ薬による治療を継続しながら、rTMS療法を追加することが可能です。保険診療では、rTMS療法に関する講習を受けた日本精神神経学会認定の専門医の指示のもと、1日40分、週5日、3週から6週間にわたるrTMS実施(治療クール)が認められています。
 rTMS療法を受けることで、すべてのうつ病が改善するわけではありませんし、効き方には個人差があります。世界で報告された臨床試験の結果をまとめて整理すると、以下のことが言えます。
 rTMS療法の抗うつ効果の程度は、おおむね抗うつ薬による治療効果と同等と考えられますが、電気けいれん療法による抗うつ効果には及びません。うつ病患者さんの約3割は抗うつ薬治療に反応しないと言われており(文献1)、そのうちの3~4割がrTMS療法に反応しています(文献2)。つまり、抗うつ薬が効かない患者さんの6~7割はrTMS療法にも反応していないことはご留意下さい。rTMS療法によって、病前に近い寛解レベルまで回復する割合は2~3割と言われています。再発率に関するデータは十分ありませんが、rTMS療法が有効であった患者さんの6~12ヶ月における再発率は1~3割と推定されています(文献2)。
 以上のように、抗うつ薬によって十分な効果が得られない患者さんの3~4割が安全性の高いrTMS療法によって抗うつ薬と同等の治療効果を示すことに一定の意義はあります。しかし、誰もが恩恵を受けるような万能な治療ではないことを事前に知った上で同意して頂く必要性があります。rTMS療法に反応しない場合には、次の治療オプションについて担当医師と話し合うこととなります。

rTMS療法の副作用に関して、以下に列挙します。

  1.  頻度の高い副作用:頭皮痛・刺激痛(30%前後)、顔面の不快感(30%前後)、頸部痛・肩こり(10%前後)、頭痛(10%未満)。ほとんどが刺激中に限定した副作用で、刺激強度を下げたり、慣れの効果によって、軽減されます。刺激が終わってからも違和感が残存したり、頭痛を惹起することがあります。
  2.  重篤な副作用:けいれん発作(1%未満)、失神(頻度不明)。(文献3)頻度は高くありませんが、最も重症な副作用としてけいれん発作が挙げられます。けいれん発作そのものは自然に終息しますが、けいれん発作に起因する外傷や嘔吐物誤嚥などの危険性が想定されます。
     これまでのrTMSに起因する全てのけいれん誘発事例の報告の中で、けいれんを繰り返す症例や、てんかんを新たに発症した症例は一例も報告されていません。また、抗うつ薬によるけいれん誘発の危険率(0.1~0.6%)と比較してもrTMS療法が特別にけいれん誘発のリスクが高い訳ではございません。
  3.  その他の副作用(頻度小):聴力低下、耳鳴りの増悪、めまいの増悪、急性の精神症状変化(躁転など)、認知機能変化、局所熱傷など。聴力を保護するために刺激中は耳栓を着用して頂きます。治療を要する躁転のリスクは1%弱と報告されています。

 以上より、rTMS療法の安全性や忍容性は、電気けいれん療法や抗うつ薬治療に比べても優れていると言えます。ただし、外来治療としてrTMS療法を受ける場合には4~6週間にわたって週5日程度通院しなければならず、頻繁な通院にともなう負担が生じることを事前にご検討下さい。

seishin.kanagawa-pho.jp

 

うつ病と光

うつ病患者の中には、日照時間が短い冬などに、気分が落ち込んだり日中に強い眠気が出たりする人がいる。「冬季うつ病」(季節性感情障害)と呼ばれ、強い人工光を浴びる治療を行うと、症状の改善が期待できる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日光を浴びる機会が少ないと、「セロトニン」という神経伝達物質が減る。この物質には、気分を落ち着かせる働きがある。冬季うつ病の患者は、光を浴びる量に敏感で、症状が表れやすいという。

 患者は、糖分を必要以上に欲するようになるのも特徴だ。糖分が、セロトニンを増やすことに関わっているためだ。

 患者は、冬の日照時間が短い地域に比較的多くみられる。そのほか、日照時間が少なくなる梅雨時や、外出する機会が少ない生活を送ると、発症する場合がある。国内の医療機関を対象に行った研究では、成人のうち、冬季うつ病が疑われる人は約2%だと報告されている。

  起床時の30分間

 主な治療法として行われているのが、患者に強い人工光を浴びてもらう「光療法」だ。一般的な居室の照明の20~50倍明るい光を出すスタンド式の装置を使い、朝起きてから30分ほど光を浴びる。1分間に5~10秒ずつ、光源を見つめる。網膜の光を感じ取る細胞が刺激され、脳に伝わると、生活リズムが整う。セロトニンの生成も増えると考えられている。

 長年、うつ症状に悩む女性(58)は、冬になると頻繁に体調を崩していた。光療法を受けると症状は改善し、休んでいた仕事にも復帰できた。女性は「光を浴びると気持ちにスイッチが入ります」と話す。

 海外のある研究では、この治療を受けた冬季うつ病患者の約6割に改善効果がみられた。薬による治療と同等の効果があると報告されている。

 一部の患者の中には、強い光を見ることで頭痛や吐き気を訴える人もいる。また、双極性障害(そううつ病)の場合は、そう状態になることがある。光の浴び過ぎには注意が必要だ。

  不眠にも効果か

 光療法は、冬季うつ病以外のうつ病患者の治療法としても有効とされている。海外で行われた複数の研究では、不眠などの改善がみられた。日本うつ病学会のうつ病の治療指針では、薬を使った治療と組み合わせることで効果が高まるとしている。

 光療法は、公的医療保険の対象ではないが、装置は数千円から数万円で購入できる。貸し出しを行う医療機関もある。

 セロトニンを増やすには、生成に関わる「トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸の摂取も欠かせない。

 この物質は、食物でしか取ることができない。タラコなどの魚卵やチーズ、ヨーグルト、バナナ、ナッツ類といった食材に豊富に含まれている。魚や肉、乳製品などは、バランス良く食べることが大切だ。

 冬季うつ病に詳しい秋田大学精神科教授の三島和夫さんは「一般的なうつ病と異なり、食欲があるなどのため、病気に気づいていない人も多い。冬に不調になる人は、冬季うつ病の可能性があり、医療機関を受診し、適切な対策を取ってほしい」と話している。

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