うつ病
うつ病といっても、どのタイプのうつ病かによって本人の気持ちの持ち方や家族の方の対応は大きく異なってきます。
何より大事なのは、信頼できる主治医をもつことです。自分に合ったアドバイスを主治医にもらうことが最も重要です。
そして、どんなタイプのうつ状態であっても、時間がかかっても気分がよい方向に向かう日は必ずあるはずですから、絶対に自殺は考えないでください。
うつ病といわれたすべての方の治療にあてはまるようなアドバイスをすることは難しいですが、たとえば典型的なうつ病で、なかなか寝付けず、一方、朝早く目が覚めてしまい、さらには朝の気分がとても悪い方にとっては、「早寝早起きの規則正しい生活をこころがけましょう」というアドバイスさえ、かえって苦しめたり、追い込んだりする言葉になりかねません。うつ病の時は「薬をのんで、休養をとる」のがよいようにいわれますが、これがあてはまるのも一部のうつ病と考えたほうがよいでしょう。
温冷交代浴について
伊香保バーデハウスベルツの湯(伊香保温泉・群馬県)
群馬県の伊香保温泉は、鎌倉時代から湯治場として発展してきた歴史の永い温泉地です。温泉が流れる石段に沿って、旅館街が展開する情緒深い温泉地として知られています。また、わが国の温泉医学の父と称されるベルツ博士(明治時代に西洋医学普及のために東大教授として国が招聘したドイツ人医師)が、研究して指導した温泉地としても知られています。
伊香保温泉の泉質は、鉄分を含んだ硫酸塩泉で、茶褐色となる特徴があります。古くから「子宝の湯」と称され、婦人病や貧血などに効果が高いと言われています。
温泉街の入口付近に、伊香保バーデハウスベルツの湯があります。この施設は、全身浴の他に、寝湯や打たせ湯など、様々な温泉入浴法と飲泉所を完備した温泉館となっています。中でも、温冷交代歩行浴や鯨噴浴という特殊な入浴法と飲泉ができることが、この施設の大きな特徴となっています。また、この施設の経営者は医学博士で温泉療法医でもあるので、温泉への入浴方法や飲泉の方法などについて指導を受けることも出来るようになっています。
特に温冷交代歩行浴は、この施設のオーナが自らクナイプ療法を発展させ考案したもので、血液循環を改善させる作用があり、温泉と冷水交互の反復温度刺激と小石の足裏への刺激から、疲労回復に効果があります。また、慢性便秘症や自律神経失調症、不眠症などに高い効果があり、冷え症や更年期障害にも効果が期待できるということです。
クナイプ療法:
ホリスティック医療という言葉をよく見聞きするようになりましたが、これは臓器とか細胞、神経などといった部分でしか人間を見なかった従来の西洋医学に対する反省から、「人間を全体的に見よう」と、アメリカで1960年代に生まれた新しい概念です。
すでにこのコーナーで紹介したシュタイナー医学やホメオパシーなどは、この代表的なものですが、「クナイプ療法」も発祥地ドイツを中心に広く採り入れられ、注目されています。
クナイプ療法は、ドイツ・バイエルン州のカトリック神父であったセバスチャン・クナイプ(1821~1897)によって今から100年以上も前に提唱された伝統と実績のある一種の自然療法で、自然の力を利用して人間のもつ自然治癒力を最大限に引き出すことを目的としています。ドイツでは、保険の適用が可能で国が健康増進策の一つとしている健康法です。
日本でも、財団法人大阪クナイプ療法協会など、導入を積極的にすすめているところは多いですし、この療法に関連づけたさまざまな商品も出回っています。温冷水浴による「水療法」、森林散策などによる「運動療法」、栄養などのバランスのとれた食事を摂る「食事療法」、ハーブや薬草を使った料理や入浴、アロマテラピーなどを採り入れた「植物療法」、それに心や身体と自然との調和を図る「調和(秩序)療法」の5つの柱から構成されています。
ドイツでは、温泉リゾート地として有名なバード・メルゲントハイム市のように国が決めた厳しい法律に遵ったクア設備などを持つ町が各地にあり、賑わっているといわれます。ドイツにおけるクナイプ療法の実情は、大和薬品(株)がメンバーとして加わっている日本食品機能研究会(JAFRA)が一昨年実施した「第3回国際統合医療ワークショップ」で、専門の治療院での水療法を参加者が見学・体験しています。
食事療法については、バランスのとれた食事は健康維持のために当然のことですし、運動療法については、森や山を歩くことでフィトンチット効果が得られることは以前から言われていたことです。とは言っても、療法である以上、専門の医師の力が必要なことは言うまでもありません。
林野庁が平成13~14年度に実施した調査(「高齢社会における森林空間の利用に関する調査報告書」)は、クナイプ療法について次のような報告をしています。
「ドイツにおける森林を活用したクナイプ療法に対する医療、療養面の森林の効用については、『多少なりとも期待できる』を含めると『期待できる』は72~91%と高い」。
この高い評価は、5つの療法すべてについて共通していますので、美しい自然環境は健康にとって欠かせないということですが、同庁はまた日本の森林の実情について、「現在のところ、医療、療養、保養、生活習慣病予防等といった明確な目的を持って整備された森林は見当たらない」と報告しています。健康のために望ましい森林づくりは、国や自治体にとって大きな課題といえましょう。 ・