うつ病は脳がダメージを受けること
典型的なうつ病といえるのは、すでに述べた中でいえば内因性うつ病です。うつ状態が一定期間持続し、治療しなくても軽快するといわれ、うつ病性挿話と呼ばれます。うつ病性挿話は治った後も再発することがあります。
うつ病性挿話は環境のストレスなどが引き金になる場合もありますが、何も原因となることがないまま起こる場合もあります。このようなタイプのうつ病では、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていると推測されています。しかし、これもセロトニンやノルアドレナリンに作用する薬がうつ状態に効くことがあるため、考えられていることであり、まだ十分に実証されているとはいえません。
最初に説明した身体因性うつ病や性格環境因性うつ病のように、原因が考えられるうつ状態でも、セロトニンやノルアドレナリンが関係しているかどうかは、まだはっきりしていないと考えたほうがよいでしょう。
たとえば、うつ状態を起こす薬剤として知られているもののひとつにインターフェロン(IFN)があります。IFNによるうつ状態の原因は、血液の中からわずかに脳内に移行したIFNの作用、副腎皮質や甲状腺を介する作用、ドパミンやインターロイキンなどに関係する作用などが関係しているといわれ、とても複雑です。
一方、休みの日には比較的元気であるなどといううつ状態では、性格面の影響が大きいことが多く、神経伝達物質の影響がそれほど大きいとは思えません。このような場合、「うつ病はあなたのこころが弱いとか甘えているわけではなく、セロトニンやノルアドレナリンなどの働きが悪くなった状態だから、薬をのんで休んだほうがよい」などというアドバイスは、逆効果になることがあります。
原因・発症の要因
典型的なうつ病といえるのは、すでに述べた中でいえば内因性うつ病です。うつ状態が一定期間持続し、治療しなくても軽快するといわれ、うつ病性挿話と呼ばれます。うつ病性挿話は治った後も再発することがあります。
うつ病性挿話は環境のストレスなどが引き金になる場合もありますが、何も原因となることがないまま起こる場合もあります。このようなタイプのうつ病では、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていると推測されています。しかし、これもセロトニンやノルアドレナリンに作用する薬がうつ状態に効くことがあるため、考えられていることであり、まだ十分に実証されているとはいえません。
最初に説明した身体因性うつ病や性格環境因性うつ病のように、原因が考えられるうつ状態でも、セロトニンやノルアドレナリンが関係しているかどうかは、まだはっきりしていないと考えたほうがよいでしょう。
たとえば、うつ状態を起こす薬剤として知られているもののひとつにインターフェロン(IFN)があります。IFNによるうつ状態の原因は、血液の中からわずかに脳内に移行したIFNの作用、副腎皮質や甲状腺を介する作用、ドパミンやインターロイキンなどに関係する作用などが関係しているといわれ、とても複雑です。
一方、休みの日には比較的元気であるなどといううつ状態では、性格面の影響が大きいことが多く、神経伝達物質の影響がそれほど大きいとは思えません。このような場合、「うつ病はあなたのこころが弱いとか甘えているわけではなく、セロトニンやノルアドレナリンなどの働きが悪くなった状態だから、薬をのんで休んだほうがよい」などというアドバイスは、逆効果になることがあります。
症状
うつ状態で一般にみられる症状を表1に示します。早期発見のためにも重要です。ふだんの自分と違う心身の調子の変化に気づいたら、また周囲の方であれば、いつもと違う相手の様子に気づいたら、一度はうつ病を思い浮かべてください。
表2にはDSM-Ⅳの大うつ病エピソードの診断基準を示します。「ほとんど一日中、ほとんど毎日の」「すべて、またはほとんどすべての活動における」「同じ2週間の間に存在」のようにかなり厳しい(うつ状態がかなり重症でなければ満たさないような)基準であることに注意してください。
表1 うつ状態でみられる症状
1) 自分で感じる症状 憂うつ、気分が重い、気分が沈む、悲しい、不安である、 イライラする、元気がない、集中力がない、好きなこともやりたくない、 細かいことが気になる、悪いことをしたように感じて自分を責める、 物事を悪い方へ考える、死にたくなる、眠れない |
2) 周囲から見てわかる症状 表情が暗い、涙もろい、反応が遅い、落ち着かない、飲酒量が増える |
3) 体に出る症状 食欲がない、体がだるい、疲れやすい、性欲がない、頭痛、肩こり、 動悸、胃の不快感、便秘がち、めまい、口が渇く |
(宮岡等:内科医のための精神症状の見方と対応、医学書院、1995を改変)
表2 大うつ病エピソードの診断基準(DSM-IV)
大うつ病エピソード(Major Depressive Episode) | |
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A | 以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分または(2)興味または喜びの喪失である。 注:明らかに、一般身体疾患、または気分に一致しない妄想または幻覚による症状は含まない。
|
B | 症状は混合性エピソードの基準を満たさない。 |
D | 症状は、物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能低下症)によるものではない。 |
E | 症状は死別反応ではうまく説明されない。すなわち、愛する者を失った後、症状が2カ月を超えて続くか、または、著明な機能不全、無価値観への病的なとらわれ、自殺念慮、精神病性の症状、精神運動抑止があることで特徴づけられる。 |
治療
通常のうつ病治療の考え方
「うつ病はこころの風邪。早く薬をのんで休養をとりましょう」という啓発活動が、不適切な形で広まっているのではないでしょうか。考えないといけないこころの問題を軽視して、薬で治そうとする患者さんが増えた気がしますし、出す薬の種類を変えるしかしない医師が増えたようにも思います。うつ病治療の主な考え方を記します。
- 身体疾患や薬剤がうつ状態の原因であったり、うつ状態に影響を与えていたりしないか検討します。もし可能性があれば、身体疾患の治療や薬剤の中止あるいは変更を考慮します。この場合も、うつ状態が重症であれば抗うつ薬療法を併用します。
- 身体疾患や薬剤が関係しておらず、うつ状態が表2のような基準を満たす場合は、抗うつ薬療法を考えます。ただし、うつ病が軽症である場合は、抗うつ薬がそれほど有効でないとする報告もありますので、抗うつ薬は期待される有効性と副作用を慎重に検討する必要があります。また、躁うつ病のうつ状態では原則として抗うつ薬を用いず、気分安定薬に分類される薬剤を処方します。
- 環境のストレスが大きい場合は調整可能かどうかを検討し、対応します。過去にいろいろな場面でうまく適応できず、うつ状態になっているような人で、性格面で検討すべき問題がある場合は、精神療法として一緒に考えていく必要があります。
抗うつ薬療法
抗うつ薬療法が好ましいと思われる状態の場合、最近はいわゆるSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)を用いられることが多いです。
SSRIは副作用が少ないと思われがちですが、頭痛、下痢、嘔気などはよくみられます。また服薬開始には、セロトニン症候群、減量や中止時には退薬症候群といって、かえって不安感やイライラ感が強くなったようにみえることもあります。
「SSRIが発売されて、精神医学を専門としない医師にもうつ病治療が可能になった」かのような話を耳にすることがありますが、それほど簡単に使える薬ではありません。SSRIやSNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)という分類で薬物治療の方針が示されることもありますが、薬剤ごとに副作用や薬物相互作用の差が小さくありません。個々の薬剤について、論文や添付文書を読んで適切に使う必要があります。まずはきちんと決められた通りに服用することが大切です。
そのほかの治療法
うつ病の精神療法の中には認知行動療法、対人関係療法などがあります。認知行動療法のひとつとして、有効性の検証までには時間がかかるとしても、職場復帰を目的としたリワークが注目されています。また、難治性うつ病や抗うつ薬の副作用が出やすい高齢者に対する無けいれん電撃療法も重要な選択肢です。
経過
最近のようにうつ病ととらえる範囲が広がり、「うつ病」といっても人ごとに思い浮かべる病像が違うような時代に、うつ病の一般的な経過を述べるのは容易ではありません。
身体疾患や薬物の影響が大きいうつ病は、その身体疾患の治り方や薬物を減量したり変更したりできるかが、治るかどうかのカギになります。
「内因性うつ病」や「大うつ病性障害でほかの精神疾患の合併がない」と診断されるうつ病は、抗うつ薬が有効であることが多く、高い割合で完治します。しかし、再発予防のための抗うつ薬療法や精神療法は十分に行う必要があります。一方、「抑うつ神経症」や「気分変調性障害」と診断される場合は、環境をどの程度調整できるか、本人が自分の性格や状況への対応を医師とともにどの程度考えていけるかによって、転帰は大きく異なってきます。
大うつ病性障害と診断され、不安障害、身体表現性障害、人格障害などに含まれる障害をも伴っている場合は、一般に大うつ病性障害のみの場合よりも治療は複雑になり、改善が遅れることが多くなります。