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【薬物依存症】孤立の病。ヤバい奴は抱きしめろ!松本俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター・薬物依存症センター長)

 

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薬物依存症は孤立の病

薬物の供給低減(取り締まり強化・規制)

 日本の薬物に対する基本的対応。

「薬物を使う人間などいてはならない、いやあり得ない。」ことを前提にしてきている。

 

しかし、問題は一向に解決していない。

 

覚醒剤取締法違反者の再犯率が高いのがその証拠だ。

 

薬物の需要低減(依存症の治療・回復支援)

「いくら取り締まりを強化し、厳罰化しても薬物を使う人間はいる」ことを前提に対策強化することが大切。(治療・回復支援)

 

 

世界で最悪の薬物はアルコールだ

日本人はアルコールには寛容だ。

 

しかし人体への被害は覚醒剤と比べても深刻だ。

 

脳が萎縮(いしゅく)することも覚醒剤よりも上だ。

 

しかし、違法薬物には厳しい。

 

要するに、いかにこれまでの人生で身近だったかで判断している。

 

よそ者に対する漠然とした恐怖心から様々な汚名をつくっているように思う。

 

 

刑務所ではなく地域社会へ復帰

「薬物乱用防止教育」は薬物への恐怖心をあおり、薬物依存症という障害を抱えた人との社会内共生、包摂的な社会の実現を阻んでいるように思える。

 

一人で悩み苦しむ人が減ることが大切 

 薬物使用経験者が低い国、日本で、薬物に手を出す人には生きづらさやトラウマ、別のメンタルヘルスの問題を抱える割合が多い。

 

だからこそ濃厚な支援が必要。

 

しかし、日本の現実は刑罰により社会から排除され孤立を余儀なくされている。

 

一番怖いことは・・・

あまり規制を強化して、薬物について相談できない社会になってしまうことが一番怖い。

 

 

 

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回復のために共生を!

「孤立の病」回復へ共生を 国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部長 松本俊彦さん(51)

 

薬物依存症は、薬物の使用を自分の意志でコントロールできない病気です。

依存は身体的にも精神的にも起こりますが、治療が難しいのは脳の神経回路が薬物に支配され、いわば「脳をハイジャック」されてしまう精神的な依存です。

 

薬物に神経回路がいったん支配されると、脳神経はその状態を記憶してしまいます。

このため、薬物をやめて何年も経っても、急に薬物への欲求が生じることがあるのです。

 

薬物への欲求が消えるのが完治なら、薬物依存症は完治しません。しかし、脳や心、行動が薬物に支配された状態から回復し、社会復帰することは十分可能です。

 薬物依存症糖尿病や高血圧のような慢性疾患であり、治療の「貯金」ができません。

 

1回の手術や短期間の治療で治る病気とは違い、治療でいったん症状が改善しても、その後、何もしなければ治療効果はゼロになります。ですから、継続的な治療が必要です。

 

ただし、幻聴や幻覚などがなければ、薬物依存症は必ずしも医療機関で治療しなくても構いません。治療では、カウンセリングやグループセラピーなど様々な形態で、自分の依存状態をきちんと認識し、薬物をやめ続ける上で直面する様々な問題を抱え込まずに相談できるようになることを目指します。

 

ですから、病院ではなくても、体験者が生活を共にする「ダルク」のような民間リハビリ施設でも、体験者が匿名で支え合う「ナルコティクス・アノニマス(NA)」のような自助グループでも、各地の精神保健福祉センターでもいいのです。

 

 

しかし現状は、薬物依存で悩む多くの人がいかなる支援にもつながっておらず、回復に向けた一歩を踏み出せずにいます。背景には偏見があります。薬物の弊害を極端に強調し、薬物による健康問題と道徳問題を混同した薬物乱用防止教育により、薬物を使った人はあっち側の人といった偏見が、子どもから大人にまで刷り込まれています。

 

こんな雰囲気では、薬物の悩みを誰にも打ち明けられません。しかも日本では個人の薬物使用が罰せられるため、医療機関や行政機関に相談したら警察に通報されて逮捕されるのではないかと恐れ、治療も受けづらいのです。

 

薬物乱用対策のうち薬物の規制については、日本は反社会勢力や密輸の取り締まりなどで成果を上げていると思います。しかし、薬物依存症に陥った人の回復を支えるには、単に刑罰だけではなく、苦痛や痛みを抱えた人々をどう支援するかという視点が必須です。薬物依存症患者は快楽のためではなく、自分の抱える困難、苦しみから一時でも逃れたいと薬物を使っているからです。

 

まずは薬物について安心して正直に話せる場を社会にたくさん作り、薬物に悩む人が自分の生活パターンなどに応じて支援を受ける場を選べるようにすることが重要です。

 

薬物依存症は「孤立の病」です。薬物を使って依存症になるかならないかは、悩みを打ち明けられる相手や仲間がいるかどうかに大きく左右されます。

 

依存症患者が社会で孤立せず、薬物乱用仲間ではない健康な人間関係の中で自分の居場所を見つけることが、回復を成功させるための一番の要素です。

 

その意味でも、薬物使用者に対する偏見を解消する教育を行うべきです。薬物使用者を排除する社会は、マイノリティーを切り捨てる社会です。障害を抱えた人たちとの共生社会を目指すなら、薬物問題を抱えた人たちとの共生が欠かせません。

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