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【ゲーム依存症】ゲーム障害という疾病。e-スポーツが盛り上がってきた今だからこそ依存症について理解を深めたい。

 

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ゲーム依存

 ゲーム障害について

国連の専門機関であるWHO(世界保健機関)は昨年5月の総会において「ゲーム障害(Gaming disorder)」を国際疾病として正式に認定した。

「ゲーム障害」の要件としては、(1)(オンラインゲームやテレビゲームなど)ゲームの頻度・継続時間などを自分でコントロールできないこと、(2)日常生活や他の関心事よりもゲームを優先すること、(3)生活に問題が生じてもゲームを続けたりエスカレートさせたりすること、の3つが挙げられ、こうした症状が通常12か月以上続けば、ゲーム障害と診断される可能性があるとのことだ(症状が重い場合はより短期でも診断される可能性あり)1

「ゲーム障害」をより一般的な言葉で言えば、「ゲーム依存症」ということになる。WHOがこのような決定に至った背景には、ゲームへの依存によって日常生活に支障をきたしてしまう例が各国で社会問題化していることがある。

 

わが国におけるゲームの使用状況と影響

 

現在、わが国において、疾病としてのゲーム障害者数が正確に把握されているわけではない。

(図表1)「一日にゲームをする時間」の分布そこで、一般的な若者のゲーム使用状況について、国立病院機構久里浜医療センターが昨年1-3月にかけて、10~20代の9千人を対象に行ったアンケート調査から確認すると、まず、回答者5096人のうち、過去12か月間にゲームをした割合は85%と大多数を占めた。

そして、平日のゲーム時間を尋ねた結果は、1日2時間以上と回答した割合が3分の1(図表1)、さらに、4時間以上と回答したヘビーユーザーも1割近くに達している。

こうしたヘビーユーザーは生活の中でゲームに重きを置く傾向が強い(逆に言えば、重きを置くからこそゲーム時間が長いとも言えるが)。同じアンケートの中で、「日々の生活で一番大切なのはゲーム」と答えた割合は、日々のゲーム時間と概ね比例しており、ゲーム時間が1日4時間を超えると1割を超え、6時間以上では25%に達する(図表2)。

さらに、問題が生じてもゲームを続ける割合も日々のゲーム時間と概ね比例しており、「ゲームにより、睡眠障害(朝起きれない、眠れないなど)や憂うつ、不安などといった心の問題が起きていても、ゲームを続けましたか」という問いに「はい」と答えた割合は、ゲーム時間が1日4時間以上5時間未満で約2割、6時間以上では4割弱に達している(図表3)。

(図表2「一番大切なのはゲーム」と考える割合)/(図表3)睡眠障害や心の問題が起きてもゲームを続けた割合

また、ゲームの長時間利用は、実生活にも大きな影響を与える傾向がみられる。「ゲームのために、昼夜逆転が起きた割合」は、1日6時間以上ゲームをする層で5割に達するほか(図表4)、「ゲームのために、学業成績の低下や仕事のパフォーマンスの低下が起きた」とする割合は、1日のゲーム時間が2時間以上になると2割を超え、6時間以上では約3割に達している(図表5)。

(図表4)ゲームのために、昼夜逆転が起きた割合/(図表5)ゲームのために、学業成績や仕事ぶりが低下した割合

ゲームを長時間利用していても実生活や学業・仕事に影響はないという回答も多いうえ、ゲームの利用状況と依存との間の因果関係も不明である点には留意が必要だが、長時間利用者の中にはゲームへの依存状態にあり、生活に支障が出ている層が一定程度存在していることがうかがわれる。

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64118&pno=2&more=1?site=nli  

 

 

 

ゲーム障害(Gaming disorder)WHOの定義

 

ゲーム障害は、持続的または反復的なゲームプレイのパターン(デジタルゲームビデオゲーム)を特徴とし、これはオンライン(インターネット上)またはオフラインでの可能性がある。

 

1、ゲームに対するコントロール障害

(ゲームの開始、頻度、集中度、期間、終了、環境)

 

2、ゲームの優先順位を、他の生活上の利益や日常の活動よりも優先される範囲で上げる。

 

3、ゲームプレイにおいて否定的な結果が生じても、ゲームの継続またはエスカレートする。

 

これらの行動パターンは、個人的、家族的、社会的、教育的、職業的、またはその他の重要な機能分野において重大な障害をもたらすのに十分な程度の重症度のものである。これらゲームプレイのパターンが、連続的または一時的かつ再発的であり、12カ月に渡って継続する場合、診断を適用する。ただし、すべての診断要件が満たされ、症状が重い場合は、必要な期間が短くなる可能性がある。

 

 

 久里浜医療センターインターネット依存専門外来

わが国でも、すでにインターネットは生活の中になくてはならない、便利で身近なものになっています。この身近なツールであるインターネットに嗜癖を起こすというようなことはありうるのでしょうか?また、どのような状態になったらインターネットに嗜癖しているというのでしょうか?

 

インターネット嗜癖の一致した定義はまだ見られていませんが、キンバリー・ヤング(Kimberly S. Young, 1998)によれば、「インターネットに過度に没入してしまうあまり、コンピューターや携帯が使用できないと何らかの情緒的苛立ちを感じること、また実生活における人間関係を煩わしく感じたり、通常の対人関係や日常生活の心身状態に弊害が生じているにも関わらず、インターネットに精神的に嗜癖してしまう状態」と定義しています。

実際に毎日のように10時間以上アクセスし、インターネットが原因で、家族や友人との関係に亀裂を生じたり、仕事や学校の勉強に支障をきたしているにもかかわらず、やめることができない人もいます。

インターネットは便利で役立つすばらしいツールですが、行き過ぎた使用のために、健康問題や社会的問題を起こしうるまでになるのです。