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がん罹患後にかかるお金の話。

固定費減と公的支援活用

 

 

 

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がん罹患後にかかるお金の話

医療が進歩し、がん患者の生存率は向上している。がんが増える60歳過ぎまで仕事を続ける人も増える中、医療費やそれ以外の出費にどう備えればいいか。「少なくともこれだけは」というお金の考え方の基本を、自身も乳がん経験者で、多くの患者の経済的な相談に乗ってきたファイナンシャルプランナー、黒田尚子さん(48)らに聞いた。

 収入減と支出増

 40歳で右乳房を全摘し、再建手術を受けた黒田さん。就労世代の家計へのがんの影響は、ずばり「収入減と支出増」だという。当たり前のようだが「診断後に家計の収入や支出がどう変化するか、具体的にイメージするのは難しい」と話す。

 例えば夫ががんになり、治療や体調不良で仕事を休むとまず夫の収入が減るが、共働きだと、看護などで妻の収入まで減る。一方、支出は治療費に加えて交通費、家事・育児サービスや外食なども意外にかさむ。

 対策は単純明快。「収入を増やして支出を減らす。それだけです」

 支出には「減らしどころ」があるという。効果が高いのは、住宅ローンや家賃、教育費、生命保険料など毎月出ていく「固定費」の削減だ。「例えば住宅ローンなら月々の返済を減らし、期間を延ばす見直しが有効。総返済額は増えますが、まずは金融機関に相談を」

 

収入増には、仕事を安易に辞めずに家族の働き手を増やす-などに加え、公的な支援制度の徹底活用が鍵になる。使える制度の洗い出しが重要だが、「公的医療保険雇用保険、年金、所得税など幾つもあり、適用を受けるには申請が必要。担当窓口もばらばらです」。

 大半のがん患者が利用する「高額療養費制度」は、支払う医療費が限度額を超えると払い戻される仕組みで、加入している公的医療保険の窓口が相談先。休職中の収入を補う「傷病手当金」は、基本的に会社員が加入する全国健康保険協会協会けんぽ)、健康保険組合などの制度で自営業者は対象外。加入先によって利用できる制度が異なるので要注意だ。

 相談先が分からない場合は、受診中の病院や、全国400余りのがん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」に尋ねるといい。相談支援センターは、その病院で治療を受けていなくても無料で利用できる。

 インターネットを使えるなら、医療者や社会保険労務士、黒田さんもメンバーのNPO法人「がんと暮らしを考える会」のウェブサイト「がん制度ドック」が便利。がんの種類など22項目を入力すると、使える可能性がある公的制度を検索でき、申請先や方法も表示される。年間約2万5千人が利用している。

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がん制度ドック

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がんと制度

サイトのご紹介と目的

「がん制度ドック」は、がん治療時に患者や家族が利用できる「公的な支援制度」や「民間の支援サービス」を検索できるWEBサービスです。

>> 患者・家族、医療従事者が使える『がん制度ドック』

患者の年齢・がんの種類・治療状況、ご加入中の制度等を入力するだけで、検索した人が利用できる医療保険制度、申請先、利用方法が一覧で表示されます。国や民間が提供する支援制度を一括して調べることができ、制度の利用漏れを防ぐことによってがん治療時に起こる経済的困難の解決を目指しています。

サービス開始の背景

近年がん治療は高額化・長期化していることから、がん患者や家族に与える経済的な影響は少なくありません。一方でがん患者や家族が利用できる制度は医療に関連した公的な制度だけではなく、民間の生命保険やがん保険、住宅ローンなどもその項目に含まれます。内容や申請方法の複雑さに加え、そもそも利用できることすら知られていない制度もあり、申請までたどり着かないことが少なくありません。

この現状を解決するべく、株式会社かるてぽすと(サイト運営元)と、がんと暮らしを考える会(コンテンツ監修)が共同企画で制作しました。多くの人が公平に制度を知り、適切なタイミングで申請する仕組みづくりをめざして構築しています。

 

www.ganseido.com

貯金を再評価

 民間保険は多くの人がお金の確保先として目を向ける。かつては一度がんになると保険加入はほぼ不可能だったが、近年は入れる商品も増えている。保険料が高い、保障が限定的などの課題があるため「給付水準が掛け金(コスト)に見合っているかよく検討して」と黒田さんは助言する。

 条件を満たさないと給付金が出ない民間保険に対し、貯金は全額自分のお金。「もっと見直されていい」と黒田さん。「生活費の半年~1年分の貯金があれば、慌てて保険に頼らなくても、公的制度や支出削減などで生活を立て直せる人が多い」という。

 ただ公的制度は頻繁に改正があり、使い方も変化している。がんと暮らしを考える会理事長の賢見卓也看護師(42)は「医療とお金について教わる機会がないため、発病後に制度を一から勉強せざるを得ない人がほとんどで、これはおかしい。公的制度について患者に知らせる仕組みを充実させるべきだ」と話す。

 

■がん遺伝情報、創薬に活用

 国立がん研究センター(東京都)は今月、全国の病院で調べたがん患者の遺伝情報や治療結果を集約し、新しい薬や治療法の開発に役立てる「がんゲノム情報管理センター」を開設した。データは匿名化し、研究者や製薬会社に利用してもらう。

 厚生労働省は、患者のがん組織を採取して遺伝子変異を調べ、効果が期待できる薬を投与する「がんゲノム医療」を推進。全国で100以上の実施病院が選ばれ、4月から順次始まっている。間野博行理事は「患者の治療選択の可能性が広がる。日本のゲノム医療の質の向上を図りたい」と話した。

 情報管理センターでは今後、患者の情報が漏れたり不正使用されたりしないような対策や、外部提供する際の条件などを決定し、各病院が持つ情報の収集を始める。データは、がんを引き起こす特定の遺伝子変異を狙った新薬の臨床試験や、薬がどんな遺伝的特徴を持った人に効果的かを調べる研究などに利用される見込み。

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がんとお金についての相談先例