AYA世代のがん
AYA世代のがんの特徴
年間、約2万人のAYA世代の方が、がんの診断を受けており、その90%以上は20歳以上の方です。
年代によって発症しやすいがんの種類が異なることが知られています。日本のデータでは、15歳から19歳では小児にも発症しやすい白血病、リンパ腫、骨軟部腫瘍、脳腫瘍といったいわゆる希少がんが多い一方で、これらのがんは20代では徐々に減少し、30代では特に女性の乳がん、子宮頸がんや消化器がんといったがんが多くなります。
表 罹患率が高いがん種順位(全がんに占める割合)(注1、 2)
1位 2位 3位 4位 5位 0から14歳(小児) 白血病[38%] 脳腫瘍[16%] リンパ腫[9%] 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[8%] 神経芽腫[7%] 15から19歳 白血病[24%] 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[17%] リンパ腫[13%] 脳腫瘍[10%] 骨腫瘍[9%] 20から29歳 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[16%] 甲状腺がん[12%] 白血病[11%] リンパ腫[10%] 子宮頸がん[9%] 30から39歳 女性乳がん[22%] 子宮頸がん[13%] 胚細胞腫瘍・性腺腫瘍[8%] 甲状腺がん[8%] 大腸がん[8%] (注1) 国際小児がん分類(International Classification of Childhood Cancer)第3版のグループに基づく悪性腫瘍の順位(ただし「その他の癌」は部位で分類)。
(注2) がん種間の比較のためいずれのがん種も悪性の腫瘍のみ。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 小児・AYA世代のがん罹患 2.小児・AYA世代のがん種の内訳の変化
困りごとを見落とさないためのツール
AYA世代は、就学、就職、恋愛、結婚、出産、子育てなどの様々なライフイベントを経験する時期で、病気や治療と向き合う上で、様々な気がかりや困りごとが生じます。
患者さんの困りごとを早く把握し、病気や治療以外の困りごとにも相談に乗れるよう「困りごとを見落とさないためのツール」を用いて支援を行っています。少しでも気になること、困っていることがあれば、該当する項目にチェックしてください。もちろん、直接お近くの医療者にご相談いただいても構いません。患者さんの負担が少しでも軽減されるよう、AYA世代支援チームが支えていきます。
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困りごとを見落とさないためのツール
困りごとを見落とさないためのツール | 国立がん研究センター 中央病院
働く患者の存在知ってほしい
15~39歳頃までの思春期と若年成人(Adolescent and YoungAdult)を指すAYA世代。この世代のがん患者には進学、就職、結婚など中高年とは違った課題が存在する。32歳で虫垂がんと診断された会社員の金沢雄太さん(37)。2回の転移を経験しながらも仕事を継続できたのは、周囲の理解と柔軟な対応だったという。
虫垂がんと診断されたのは、平成26年11月でした。8月ごろからおなかがジクジク痛むことがあり、11月になって立ち上がれないほどになった。日曜だったので翌日からの仕事に支障が出ないように、自宅近くの大学病院の救急外来を受診しました。薬をもらって帰るつもりだったのに、医師からは「盲腸が炎症を起こしている」。即日入院になりました。
重度の腸閉塞(ちょうへいそく)も併発していたのですが、その治療を考えているときに、虫垂がんが判明しました。がんという言葉が持つ重みにショックも受けましたし、人生が暗い穴の底に落ちていくような気分になりました。
上司にすぐに電話で報告すると、「まずはちゃんと治せ。そして戻ってこい。席は空けておくから」と言ってくれました。友人の父親ががんになり、退職せざるを得なくなったケースを聞いていたので、上司の言葉に安心できました。
復職へ話し合い
虫垂がんの手術後は腸閉塞の治療を続け、翌年の1月下旬に退院しました。入院生活で体重は17キロほど減りました。1月に次女が生まれたばかりだったので、自宅療養中は子供の世話をしながら、徐々に体力を戻していきました。
3月に復職したとき、上司から働き方の希望を聞かれました。今の体力や、フルタイムでの勤務は難しいことなどを伝え、当面はコアタイムである午前11時から午後4時に働くことになりました。立場も変わりました。診断前は課長級で部下もいたのですが、「人の面倒を見る余裕はないな」と考えて、一般社員として働くことを選びました。
上司からの提案でありがたかったのが、仕事の目標設定です。ほかの人と同じレべルにしました。「できなかったら下げたらいい。チャレンジしよう」と言ってくれたんです。そのころは、生きて社会復帰できた喜びが大きく、復職がゴールのように感じていました。でも、次の目標を設定できたことで、病人として戻るのではなく、健康な人と同じ状態のパフォーマンスを目指すということを意識できたんです。
《28年は肝臓に、29年には肝門部に転移が見つかった。手術と抗がん剤治療を経て復職した》
抗がん剤治療では副作用のつらい時期は休み、体調が良くなったら働きました。会社と接点を持ちながらの治療は楽じゃなかったけれど、働くことのモチベーションを保てました。
柔軟な対応を
30年の5月に復職して、今は経過観察中です。診断後も働き続けられたのは、会社に治療と両立するための制度や風土、文化がそろっていたからです。ワーキングマザーが多いので、急に早退したり休んだりすることに理解もありました。通院したり、体調が悪いときに出社を遅らせたりできる、フレキシビリティーは大切です。
ただ、周囲のがん患者と話すと、柔軟に対応してくれる会社はまだ少ないようです。でも、就労世代でがんになると、子供のためにも働き続けないといけない人が多い。私自身も2人の娘がいて、妻も働いていますが、共働きでライフプランを組んでいます。
がんに罹患(りかん)する人は、非就労世代が約7割を占めるため、医療者も含めて「働きながら治療できる」という選択肢はまだ知られていません。
今は、がんだけでなく介護を抱えた方などいろんな事情の人がいます。ルールを作るというよりも、お互いのことを知って、柔軟性のある環境をつくらなくてはいけないと考えています。
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■かなざわ・ゆうた 昭和57年生まれ。京都府出身。大学卒業後、人材派遣会社、ITベンチャーを経て、転職支援会社、ジェイエイシーリクルートメントに入社。26年に虫垂がんと診断される。その後、肝臓、肝門部に転移。手術と抗がん剤治療を行い、現在は経過観察中。
就労支援
AYA世代は、就職を控えた学生さんや職業人としての役割を担う働き盛りの方たちが含まれるため、がんの罹患が就職・就労に影響し、不安を感じる方が少なくありません。8F相談支援センターでは、医療ソーシャルワーカー、社会保険労務士、ハローワークの就職支援ナビゲーターが「お仕事に関する相談」をおこなっています。