生きるは作業のつみかさね

作業をすれば元気になれる!作業療法ノススメ。

重症筋無力症を患う作業療法士。NPO法人ピーストレランス代表理事

 ピース・トレランス

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この先の生活が見えない

病院には、治療後や退院後にどう生きるのかの情報が本当に少ない。

先に待つ暮らしが想像できない、大きな不安の中にいる。

 

入院から一年後、ついに職場を退職した。

「人生のどんでん返しだった」

病気との暮らしの「折り合い」を探す第二の人生が始まった。

 

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重症筋無力症1

断固とした決意は実はもろい

医療的には妥当な判断でも、それが重大な問題であるほど、患者は簡単には答えを出せない。置かれた状況やタイミングが変われば意志は容易に変化するし、断固とした決意に見えても実はもろく、危ういものだ。

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重症筋無力症2

 

障害は「折り合い」をつけるもの

障害は受け入れるものではなく、暮らしの中で「折り合い」をつけるもの。

病院は暮らす場所ではない。

 

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重症筋無力症3

 

障害者ゆえに意志や存在を軽視される。

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重症筋無力症4

患者である前に生活者

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重症筋無力症5

「一緒に立ち止まる勇気」

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重症筋無力症6

 重症筋無力症について

重症筋無力症とは

重症筋無力症は、手足を動かすと筋肉がすぐに疲れて、力が入らなくなる病気です。全身の筋力が弱くなったり、疲れやすくなったりします。また、まぶたが下がってくる眼瞼下垂(がんけんかすい)と、ものが二重に見える複視(ふくし)などの眼の症状を起こしやすい特徴があります。

神経から筋肉への指令が伝わらなくなります。

アセチルコリンは、神経と筋肉が接する場所(神経筋接合部)において、神経の末端から筋肉に向けて放出され、脳からの指令を伝える役割をしています。重症筋無力症では、その指令を受け取るアセチルコリン受容体の働きを妨げる抗体(抗アセチルコリン受容体抗体*1)が体内で作られて、脳からの指令が筋肉に伝わりにくくなることが原因とされています。この抗体がみられない患者さんの一部の方に、アセチルコリン受容体の集合に重要な働きをする筋特異的チロシンキナーゼ(マスク*2)に対する抗体をもつ人がいます。

*1 抗アセチルコリン受容体抗体
アセチルコリン受容体のある膜を壊したり、受容体の数を減らしたり、アセチルコリンが受容体に結合するのを阻止します。
*2 抗マスク抗体
マスクの働きを抑えて、アセチルコリン受容体の数を減らすと考えられています。特に女性に多い傾向があり、嚥下困難(えんげこんなん)や呼吸筋麻痺症状が出やすい特徴があります(嚥下困難についてはどんな症状?をご覧ください)。

神経筋接合部正常時と重症筋無力症発症時

正常時の挿絵
重症筋無力症発症時の挿絵
筋特異的
チロシンキナーゼ(マスク)
アセチルコリン
受容体抗体
抗マスク抗体

20〜50歳代の女性に多く、近年では男女ともに50歳以上で発症する
患者さんが増加しています。

発症年齢の線グラフMurai H et al., J Neurol Sci 305: 97-102, 2011より改変
患者数 *22,000*[*2014年度 *特定疾患医療受給者証交付件数より推定]
有病率 人口10万人あたり11.8人[2006年 全国臨床疫学調査
男女比 女性は男性の1.7倍[2006年 全国臨床疫学調査
胸腺腫合併率 32.0%[2006年 全国臨床疫学調査

自己免疫異常が原因であるため、感染や遺伝することはありません。

神経と筋肉が接する場所の筋肉側にあるアセチルコリンの受容体が、自分の免疫異常( 自己抗体) によって、減少するために筋無力症状がみられます。なぜ、自己抗体が作られるかはわかっていません。他人に感染したり、遺伝する病気ではありません。

多くの患者さんの胸腺に異常(胸腺腫、胸腺肥大)がみられます。

胸腺異常の挿絵胸腺は、心臓の前方にある免疫に関係する器官です。成人以降は小さくしぼんでいきます。 しかし、若年~成人発症の抗アセチルコリン受容体抗体が陽性の多くの全身型重症筋無力症の患者さんの胸腺は、肥大(過形成)してリンパ球が多く含まれています。抗マスク抗体が陽性の場合は、胸腺異常が少ないことが知られています。胸腺腫を合併したり胸腺肥大がある場合には、胸腺(腫)摘除が考慮されます(どんな検査?をご覧ください)。

www.jbpo.or.jp

www.mgjp.org

mgjapan.org

特定非営利活動法人 筋無力症患者会は、重症筋無力症患者とその家族、及び、重症筋無力症の疑いのある患者とその家族が、交流を図り、情報を共有し、一緒に励まし合いながら、病気の正確で有益な情報を得て充実した日常を過ごし、当事者である患者が、分け隔て無く社会生活を送ることが出来るように共に考える会です。
当会では、先天性筋無力症候群、Lambert-Eaton型筋無力症候群(LEMS)など、筋無力に近しい疾患も同様にサポートし、一緒に活動しております。
 
重症筋無力症は、平成28年度末の統計で、特定疾患医療受給者証所持者数は、22,998人いますが、受給者証を取得していない方、小児慢性疾患医療受給者証所持者、受給者証を取得できないでいる方などを勘案すると、全国で約35,000人以上の人が罹患しているのではないかと考えられます。患者の中には、筋無力症だけではなく、他の疾患やがんを併発するなどしながら病気とたたかっている方は少なくありません。
 
 当会では、難病問題の啓発と対策の前進、就学問題や就労問題、社会生活の安定、福祉の増進をめざし、他の患者団体との連携を持ち、行政や各自治体への働きかけ、助言、支援を行っています。また、国や医療機関に早期発見、治療法の確立及び充実した生活を送るための提言、医療福祉制度の向上などを求め、、患者自ら考える力(患者力)を蓄え、QOL(生活の質)を高める活動を進めております。

 

www.nanbyou.or.jp