がん研究支援(産経新聞 より)
「みんなの力で、がんを治せる病気にする」をスローガンに、がんを意味する英語「CANCER(キャンサー)」の頭文字Cを名称から削った商品などを企業が販売し、売り上げの一部をがんの治療研究に充てる活動が行われている。誰もが参加し、貢献できる仕組みづくりを目指す。
「deleteC」主催のイベント。中島ナオさん(前列中央)の呼び掛けに賛同した多くの支持者が参加した=2月、東京・日本橋
NPO法人 「deleteC」(東京)
主体はNPO法人 「deleteC」(東京)。
代表理事 の中島ナオさん(37)は、31歳の時に乳がん と診断され、34歳でステージ4の状態に。中島さんの呼び掛けに、多くの企業や団体が賛同した。
deleteCが大きな声で言いたいこと
「がんを治せる病気にしたい」 そのシンプルで強い想いから、deleteCのすべては始まりました。 毎年あらたに100万人以上ががんと診断され、 毎年37万人もの人ががんによって命を落とし、 生涯で2人に1人ががんになるといわれています。 こうした数字を目の前にすると、 その問題の大きさに、足がすくむ気持ちになります。 いったい自分になにができるのだろう、と。 でも、私たちは絶対に”あきらめたくない”と思いました。 がんの治療研究は日々進んでいます。 その研究のひとつひとつが、希望の種です。 治療研究が進めば、がんを治せる病気になる日が確実に近づきます。 だから、私たちは、自分たちにできることとして、 がんの治療研究を”応援”し続けることを決めました。 deleteCは、これまでがんという問題に対して関われなかった個人、企業、さまざまな立場の人たちをつなぎ、誰もが参加できて、みんなでがんの治療研究を応援できる仕組みをつくります。 その応援の輪が広がり、大きな力になった分だけ、 「がんを治せる病気にする」という新しい未来を手繰りよせられると信じています。 特定非営利活動法人 deleteC 中島ナオ・小国士朗
メッセージ
31歳の時に「がん」と診断されました。 副作用が重い治療・手術により、たくさんの失うものがあり、様々な変化が訪れました。 ですが、自分自身が変わってしまうわけではありませんでした。 「がん」を抱えながらでも、暮らしは続きます。 「5年で長生き」と言える病状でしたが、1週間、1ヶ月を重ね、5年以上が経ちました。 その間には、34歳で「ステージ4」という、がんがもっとも進行している状態になりました。 「数ヶ月後か1年後かは分からないけれど、薬は効かなくなる」という治療を今も続けています。 「がん」は残酷で怖い病気です。 がんを患ってから出会い、笑顔で語り合った方との別れを何度も経験してきました。 「まだまだ生きていてほしかった」「できることはなかったのか」という周りの方の痛いほどの想いを感じる度に、この気持ちを形にできていたら何かが変わっていたのではないか、と思ってきました。 がんは「いつかは治せるようになる」とも言われています。 ならば、その「いつか」を待つだけではなく、1日でも早く手繰り寄せたい。 そう願わずにはいられません。deleteCのゴールはただ一つ。 「みんなの力で、がんを治せる病気にする」ことです。 探しても見つからなかった希望を作るため、何年も叶えたいと思い続けてきた「がん治療研究の応援」を進めていきます。 1人1人が想いを示し、行動すれば、必ず大きなパワーになる。それが、私の描く未来です。
代表理事 中島ナオ NAO NAKAJIMA
デザイナー/ナオカケル株式会社 代表 1982年生まれ。2014年31歳で乳がん を罹患。16年ステージ4に。17年東京学芸大学 大学院修了。同年、ナオカケル株式会社設立。現在も治療を続けながら自らの経験を通じて「がんをデザインする」ことに取り組む。代表作は髪があってもなくても楽しめる"N HEAD WEAR"。
2018年11月2日。渋谷のカフェでナオちゃんと話している時に、このdeleteCの仕組みをひらめきました。 で、瞬間的に思ったのは「自分にもできることが、みつかった!」でした。 僕は今のところがんの当事者でも、がんの専門家でもないわけですけど、そんな自分でも「C」のない商品を買うことはできるし、(怒られることがあるかもしれないけど)「あなたのCを消してくださいませんか?」というお願いを企業の方々にすることはできます。 それなら「僕にもできる」って思えて、素直に嬉しかったんです。 そしてなによりも、ナオちゃんが本気で口にした 「みんなの力で、がんを治せる病気にする」というその未来を、僕もまた本気で見たいと思ったんです。 今はまだまだ卵からかえったばかりのひよこみたいなプロジェクトなんですけど、眉間にしわを寄せず、肩に力を入れることなく、みんなでワイワイ一緒に育てられるdeleteCを作っていきたいなと思います。
代表理事 小国士朗 SHIRO OGUNI
プランナー・ディレクター/株式会社小国士朗事務所代表取締役 1979年生まれ。2003年にNHK 入局。「プロフェッショナル 私の流儀(スマートフォン アプリ)」「NHK1.5チャンネル(SNS 動画配信サービス)」などをてがけた。「注文をまちがえる料理店」発起人。2018年7月にNHK を退局し、現職。
「私は自分のお金で、がんの研究を応援したい!」 中島ナオさんはまっすぐなひとみで訴えてきた。 その言葉を聞いた時、自分でもびっくりするほど、強い衝撃を受けた。 医療技術は驚異的なスピードで進化している。 特にがんの分野では、毎年、革新的な技術が発表されている激戦区だ。 いつの日か、誰かが、超早期のがんを診断できる検査や、有効な画期的な治療法を開発してくれるのだと信じていた。 しかし、実際に自分ががんになると、これらの治療法は自分の手の届かないはるか遠くにあることを思い知った。 医師でもなければ研究者でもない自分にできることは、犠牲と不安に耐えることだけだった。 でも、中島さんの言葉は明るくて、この先に広がる未来を見えていた。 何を知った気になっているのだろう。自分にも何かできるかもしれない。 どこかの誰かが実現する世界ではなくて、「自分たち」が夢を実現させる世界。 がんを諦めたくない、と思っているお医者さんを応援できる。 がんと闘っている患者さんたちを勇気づけることができる。 自分と大切な人たちのために、1日でも早くがんを治せる病気にしたいと想うことができる。 是非、楽しみながら、この想いを示してほしい。 貴方やみんなの想いが、大きな力となって未来を創るのだから。
創業理事 長井陽子 YOKO NAGAI
Varinos株式会社取締役 1984 年生まれ。2017年33歳で子宮頸がんを罹患。11年東京大学 大学院薬学系研究科 博士課程修了。11年産業技術総合研究所 研究員。13年東海大学 医学部奨励研究員。14年イルミナ株式会社 入社。17年より創業。成育医療研究センター 研究員。
www.delete-c.com
サントリー が炭酸飲料「C.C.Lemon」で、ペットボトルの表示名からC.C.を消した商品を数量限定で発売し、他の企業もdeleteCのロゴを使ったあめやタオルの販売を開始。東京都内で複数のカフェを展開する企業でも、キャンペーンのオリジナルメニューを検討しているという。 deleteCは昨秋、売り上げの寄付先となる、がんの治療研究を公募。17件の応募の中から、子宮頸がんの合併症を減らす研究(埼玉医大 )と、小児がん の遺伝子解析の研究(名古屋大病院)を選考委員会が選出し、各100万円を贈った。 選考委員を務めた、がん患者支援「キャンサー・ソリューションズ」(東京)の桜井なお み社長は「参加型の取り組みにより、皆で何ができるかを考え、語り合うきっかけになる。がんの治療研究の重要性を社会に訴えていきたい」と話した。埼玉医大 国際医療センター婦人科腫瘍科の藪野彰助教 は「がんを治してほしいという多くの人の思いを感じながら、研究を遂行していきたい」と決意を新たにした。
国立がん研究センター の統計によると、2018年にがんで死亡した人は約37万人。毎年、100万人近い人が新たにがんに罹患し、生涯で2人に1人は何らかのがんにかかるとされる。
中島さんは、抗がん剤 治療を受けながら帽子や漆器 をデザインして商品化するなど、精力的な毎日を過ごしている。 中島さんは「がんの症状には個人差があり、治療をしながら仕事をしている人も多くいる。でも、世間ではがんは暗くつらいものと認識されやすい」と指摘。「がんになっても大丈夫という未来にするため、一人でも多くの人たちの応援や支えが必要です」と訴えている。