生きるは作業のつみかさね

作業をすれば元気になれる!作業療法ノススメ。

障害者就労の支援機器。最先端ITで働く力発揮。(産経新聞より)

誰もが活躍できる社会を目指す「1億総活躍社会」。女性も高齢者も障害のある人も、それぞれが自分の力を発揮できる雇用環境の整備に関心が高まっている。その一環として技術革新が進むのが、障害のある人が効率的に仕事を行う機能を備えた「障害者の就労支援機器」。IT(情報技術)やIoT(モノのインターネット)など最先端の技術が活用されている。

 

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ITを活用したプログラム例

 

障害者の自立支援機器を紹介

 昨年12月、大阪市中央区で開かれた障害者の自立支援機器を紹介する「シーズ・ニーズマッチング交流会」。

「就労場面における自立支援機器」をテーマに、科学技術を応用した福祉用具の開発・情報提供などを行う公益財団法人「テクノエイド協会」(東京都新宿区)が開いた。

当協会は、福祉用具に関する調査研究及び開発の推進、福祉用具情報の収集及び提供、福祉用具の臨床的評価、福祉用具関係技能者の養成、義肢装具士に係る試験事務等を行うことにより、福祉用具の安全かつ効果的な利用を促進し、高齢者及び障害者の福祉の増進に寄与することを目的としています。

www.techno-aids.or.jp

 

 体に障害のある人の動きやすさを追求した多機能電動車椅子や歩行アシストスーツなどとともに関心を集めたのが、モバイル端末を利用した就労支援機器だ。

 

「だれでもワークプロ」

ソフトウエア開発の「マイクロブレイン」(さいたま市)が手がける「だれでもワークプロ」は、掃除やクリーニング、菓子・パン製造などの作業手順をスライドショー形式で見せたりして、知的・精神障害者の作業効率アップに活用するiPad(アイパッド)専用の作業手順作成・閲覧ソフト。

◆だれでもワークプロとは?

だれでもワークプロは、知的障害者授産施設、または知的障害のある方が働く就労場所において行う分野の仕事に活用できる、iPad 専用のワークマニュアル作成・閲覧ソフトです。

写真やイラストを読み込んで作る自作カードや、さまざまな機能を実現する多機能なカードを組み合わせた直感的なワークマニュアルで、就労現場での迷いや混乱を軽減し、視覚的な支援を基に作業当事者への達成意欲や業務への意欲向上を目指すシステムです。

知的障害者の為の就労支援アプリ「だれでもワークプロ」公式サイト

 

同社の金子訓隆取締役(50)は「知的障害や発達障害のある人は、言語より視覚情報の方が受け取りやすい。そこで、作業マニュアルを言葉と絵でデジタル化、動画化した。端末一つで自分で作業の確認ができ、業務意欲の向上にもつながる」と開発のねらいを話す。

 

データ化で効率向上

 NTTドコモの特例子会社「ドコモ・プラスハーティ」大阪南港センター(大阪市住之江区)は、テーブルの天板を拭くダスターの動かし方や、ダスターの汚れに応じた赤・青・黄色の色分けバケツの使い方などの作業マニュアルをデータ化した同社用の衛生管理(清掃)ソフトを使い、作業効率のアップについて検証を行っている。

ドコモ・プラスハーティとは

成長を志向し、挑戦し続けます

ドコモ・プラスハーティとはイメージ

 

 

企業における障がい者雇用は、多様性を取り込みつつ強い会社を作ってゆこうというダイバーシティ経営の一環として語られることもありますし、やはり、法律に定めのあることだから、企業の社会的責任として行うべきものだとして、コンプライアンスCSRの観点から語られることもあります。

精神障がいのある方の雇用の義務化や、法定雇用率※1の引き上げが2年後に迫るタイミングで、ドコモグループの障がい者雇用を積極的に推進するために、ドコモ・プラスハーティ社は設立され、2016年2月26日にNTTドコモの特例子会社※2に認定されました。

設立にあたっては、ドコモグループの障がい者雇用の進め方について、以下の整理が図られました。

ドコモ・プラスハーティはこれまで雇用の中心となってこなかった重度の知的障がいのある方を中心に雇用を進める。

ドコモグループ各社はこれまでどおり法定雇用率の達成をめざして障がい者雇用を推進する。

ドコモ・プラスハーティでは、障がいのある社員の定着というものをダイバーシティ的な観点として重要視しています。そのため、自社で障がいのある方の雇用を進めるだけではなく、ドコモグループ全体で、障がいのある方が活き活きとその能力を発揮して長く働いてゆけるようにサポートすることをもう一つの事業の柱に据えています。これら両輪で、ドコモグループの障がい者雇用推進に貢献することがドコモ・プラスハーティの役割であり、これら事業活動の結果として、CSR的な側面である法定雇用率の達成があるのだと考えています。

また、障がいのある方と共に働くなかで、様々なプラスの気付きを得ることができました。それは、障がいのあるなしに関わらず、社員が職場で、より力を発揮するために必要なことであり、会社をより強くすることにつながる気付きとも言えるものでした。

当初、私たちは障がいの理解があれば、雇用定着につながるはずだと考えていましたが、いまでは、障がい理解のみでは充分ではなく、本来多様である人間そのものを深く理解することこそが重要なのではないかと考えるようになりました。

今後、当社の運営を支えているグループ各社に、これらの気付きを具体的な形でフィードバックしてゆくことで、なぜ、多様性を受け入れてゆくことが経営上必要なのかという問いに対する一つの回答を示すことになるでしょうし、特例子会社の存在意義は障がいのある方を雇用することだけにあるのではないということをも示すことになると確信しています。

※1 法定雇用率とは、雇用する労働者に占める身体・知的障がいのある方の割合のことで、現在、法的義務として従業員50人以上の一般企業は、この割合を2%以上にする必要があります。

※2 特例子会社とは、親会社と障がい者雇用率の算定上一体とみなされる子会社のこと。

 

 

 

 同社業務運営部の岡本孝伸担当部長(46)は「ぶ厚い紙のマニュアルを持ち歩くのは、仕事を教える側にも不便。端末で手軽に作業が確認できれば、就労現場での障害のある人の混乱や迷いを軽減できる」と期待を寄せる。

 

誤差数センチで検出も

 一方、視覚障害者の自立歩行・通勤支援機器として注目されているのが、衛星利用測位システム(GPS)を利用して視覚障害の人の通勤を助ける個人用の「My地図端末機器」の開発。

NEDO、みちびきを利用した歩行補助システムに実用化支援

 

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)は7月20日、位置情報を利用した歩行補助システムなど新たな福祉用具について、実用化支援を行うと発表しました。福祉用具開発のリスクを低減し、高齢者や心身障害者、介護者の負担軽減とQOL(Quality Of Life)向上に貢献することを目指すとしています。

負担軽減とQOL向上に向けたテーマを3件選定

今回発表されたテーマ3件のうち1つには、位置情報を利用するシステムとして、視覚障害者の自立歩行を補助する「あらゆる状況に歩行補助できるMy地図端末機器の開発」が採択されました。助成予定先は株式会社ニュージャパンナレッジ(山口市)と株式会社フォルテ(青森市)の2社で、システムは以下のような仕組みで動作します。

スマートフォン骨伝導スピーカー等を用いた歩行補助システム>

スマートフォン、骨伝導スピーカー等を用いた歩行補助システム(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構ニュースリリースより引用)

1)歩行経路上で目印となる地物の情報をクラウドクラウドコンピューティング)に登録して独自の地図データベースを作成します。

2)みちびきとGPSを使って精度の高い位置情報を取得します。

3)メガネ型カメラで取得した画像から判断した「信号機の色」の情報を参照しつつ、骨伝導ヘッドホンで歩行者を誘導(登録ルートから外れた時は、警告音でルート逸脱を知らせ、所定のルートに戻れるようガイド)します。

このほか、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者向けの「視線や目・まぶたの動きによる意思伝達装置の開発」と、「マルチデバイス・英語対応の点字図書製作システム開発」の2テーマにも助成が行われます。

 

 日本の衛星測位システム準天頂衛星「みちびき」と、米国のGPSを組み込んだ高精度位置情報検出機器を用い、使用者専用の個人地図データベースを作成し、スマートフォンに登録。歩行誘導は、骨伝導ヘッドホンによる音声案内が行い、登録ルートから外れたときは振動や音声警告で知らせる。

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO)の福祉用具実用化開発支援事業として、システム開発の「ニュージャパンナレッジ」(山口市)とIoT機器開発のフォルテ(青森市)が共同開発。来年以降の発売を予定している。

 会場で解説にあたったニュージャパンナレッジ顧問の小菅一彦さん(70)は、「電波の届かない駅構内など屋根のある建物ではまだ使用できないが、みちびきを利用することで誤差数センチレベルの位置が検出でき、歩行の安全は格段にアップする」と話し、大きな反響を呼んだ。