- 心筋梗塞・脳梗塞発症
- リハビリテーション
- 失語症
- 重要なコミュニケーションへの努力
- 患者さんとの接し方-6つのポイント
- 深めたい言語障害者への理解
- ロンドンパラリンピックに励まされた
- 転機にになったのは患者サロンへの参加
心筋梗塞・脳梗塞発症
梅雨の時期。55歳男性は、心筋梗塞と脳梗塞を発症し交通事故にあった。
予兆はあったらしい。
リストラを示唆されたり、営業職から工場に配置されたり。
給料も大幅にダウンされていた。
長女は中2で家のローンもある。
「体の感覚がおかしいけど頑張らなきゃ」と思う矢先の事故だったという。
リハビリテーション
脳梗塞のダメージは重かった。
しばらくは昏睡状態。
意識が回復しても、右半身にまひが残った。
さらに言葉が話せなかった。
失語症
大脳(たいていの人は左脳)には、言葉を受け持っている「言語領域」という部分があります。失語症は、脳梗塞や脳出血など脳卒中や、けがなどによって、この「言語領域」が傷ついたため、言葉がうまく使えなくなる状態をいいます。
つまり、失語症になると、「話す」ことだけでなく、「聞く」「読む」「書く」ことも難しくなるのです。<図1>。しかし、脳(左脳)の傷ついた場所の違いによって、「聞く」「話す」「読む」「書く」の障害の重なり方や程度は異なり、失語症は次のようなタイプに分類されています。
図1 失語症になると
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重要なコミュニケーションへの努力
失語症でも運動障害性構音障害でも、患者さんがまずコミュニケーションに対して意欲をもち続けることがとても大切で、家族や周囲の人もこのことに十分に注意を払いたいものです。
脳卒中による言語障害は、多くの場合、完全に元通りにはなりません。また、言葉の訓練をすればするほど、回復がよくなるというものでもありません。このことは、患者さんにも家族にも、とてもつらい問題です。
しかし、言葉の障害が起こってから、一定の期間(約1年)がたったとき、どのようにコミュニケーションが図れるかが大切で、言葉の障害があっても、残された能力を最大限に生かし、積極的に日々を過ごすことが重要なのです。
患者さんとの接し方-6つのポイント
最後に失語症の患者さんに接するときに、家族や周囲の人が心掛けておきたい6つのポイントをまとめてみます。
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話しかけるときは、ゆっくりとわかりやすい言葉遣いで話しかけましょう。
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話しかけるときには、やさしい漢字や絵、図などを書いたり、ジェスチャーや実物などを示したりすると、理解されやすいでしょう。
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言葉が出にくいときは、「はい」「いいえ」で答えられるよう質問を工夫しましょう。患者さんの言いたいことを推測して、考えられる答えを書いて示すことも有効です。
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言葉が出ないときは、せかさないで少し待ってあげます。ただし、待ち過ぎると、かえって患者さんのストレスになります。適当なところで、「~のことですか?」などと助け船をだしてあげましょう。
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患者さんの言い間違いを、とがめたり、笑ったり、何度も言い直しをさせたりすることは避けてください。
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失語症の患者さんは、五十音表で、うまく言葉がつづれないことが多いので、使わないでおきましょう。
こうした心配りが周りの人にあれば、言葉の障害を持つ患者さんはどれだけ助かることでしょう。それは患者さんのリハビリ意欲を高め、もとの生活に戻る励ましとなるものです<図10>。
図10 患者さんへの気配りを大切に
深めたい言語障害者への理解
高齢社会が進み、日本の脳卒中患者は170万人を超え、助かったものの失語症に悩む高齢者が増えています。しかし、失語症には偏見と誤解が多く、家庭や社会で患者さんの言葉のリハビリが必ずしもうまくいっているとはいえません。
このページが、患者さんや家族、周囲の方だけでなく、広く社会に、脳卒中による言語障害についての理解が深まるきっかけになるのを願っています。
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ロンドンパラリンピックに励まされた
しばらくは家族に当たり散らし、眠れない日々が続いた。
勇気づけてくれたのが、ロンドンパラリンピックの陸上競技。
人の体の可能性に驚いた。
リハビリを徹底的にやろうとした。
しかし、自宅退院までこぎつけると、失語症の影響が強調されてしまい、その後鬱々と3年間を過ごしていた。
転機にになったのは患者サロンへの参加
「弱さを隠さなくていいんだ。」と思えた。