生きるは作業のつみかさね

作業をすれば元気になれる!作業療法ノススメ。

【潰瘍性大腸炎】「小説を書く作業があってうれしい」小説家 長浦京さん(産経新聞より)

■痛い苦しい中での執筆 生と死はあるがままに

 小説家の長浦京さん(49)は、放送作家として活躍していた9年前、難病の潰瘍性大腸炎と診断された。激しい腹部の痛みと、絶え間ない下血に苦しみながら、小説の執筆を開始。痛く、苦しかったこの記憶を脳裏に焼き付けて、生と死が激しくぶつかり合う上質なエンターテインメント作品を世に送り出している。

 

 

クローン病発症

10代でクローン病を発病しました。

クローン病とは

大腸及び小腸の粘膜に慢性の 炎症 または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を 炎症性 腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といいます。


クローン病も、この炎症性腸疾患のひとつで、1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医クローン先生らによって限局性回腸炎としてはじめて報告された病気です。

クローン病は主として若年者にみられ、口腔にはじまり肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍(粘膜が欠損すること)が起こりえますが、小腸と大腸を中心として特に小腸末端部が好発部位です。非連続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)を特徴とします。それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じます。

クローン病(指定難病96) – 難病情報センター

潰瘍性大腸炎は、クローン病と同じく、炎症性腸疾患の一つ。ともに国の難病に指定されている。下痢や血便、腹痛が続き、重症の場合は発熱、下血、体重減少、貧血などの全身症状が表れる〉

 

でも、20代に入るころには良くなり、酒も飲むし、たばこも吸うしで、多少下血があっても痔(じ)かな、と自分で自分をごまかしていた。

大学卒業後は、音楽雑誌社に1年ほど勤め、その後はフリーで音楽番組などの放送作家をしました。疲労とストレスで体調を崩しながらも仕事をする人がいる業界なので、腹痛ぐらいで周囲に迷惑をかけられないというプレッシャーもあった。

また、今すぐ死ぬような病気でもなく、大げさにしたくなかった。それがよくなかったようです。

 

クローン病の治療と経過

クローン病の治療 

クローン病の治療としては、内科治療(栄養療法や薬物療法など)と外科治療があります。内科治療が主体となることが多いのですが、腸閉塞や穿孔、膿瘍などの合併症には外科治療が必要となります。

【栄養療法・食事療法】
栄養状態の改善だけでなく、腸管の安静と食事からの刺激を取り除くことで腹痛や下痢などの症状の改善と消化管病変の改善が認められます。

栄養療法には経腸栄養と完全中心静脈栄養があります。経腸栄養療法は、抗原性を示さないアミノ酸を主体として脂肪をほとんど含まない成分栄養剤と少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤があります。完全中心静脈栄養は高度な狭窄がある場合、広範囲な小腸病変が存在する場合、経腸栄養療法を行えない場合などに用いられます。

病気の活動性や症状が落ち着いていれば、通常の食事が可能ですが、食事による病態の悪化を避けることが最も重要なことです。一般的には低脂肪・ 低残渣 の食事が奨められていますが、個々の患者さんで病変部位や消化吸収機能が異なっているため、主治医や栄養士と相談しながら自分にあった食品を見つけていくことが大事です。

【内科治療】
症状のある活動期には、主に5-アミノサリチル酸製薬(ペンタサやサラゾピリン)、副腎皮質ステロイドや免疫調節薬(イムランなど)などの内服薬が用いられます。5-アミノサリチル酸製薬と免疫調節薬は、症状が改善しても、 再燃 予防のために継続して投与が行われます。また、これらの治療が無効であった場合には、抗TNFα受容体拮抗薬(レミケードやヒュミラ)が使用されます。薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。

【外科治療】
高度の狭窄や穿孔、膿瘍などの合併症に対しては外科治療が行われます。その際には腸管をできるだけ温存するために、小範囲の切除や狭窄形成術などが行われます。

内視鏡的治療】
クローン病の合併症のうち、狭窄に対しては、内視鏡的に狭窄部を拡張する治療が行われることもあります。

クローン病(指定難病96) – 難病情報センター

 

しっかり治療や検査をしなかったつけが来たのは、平成20年の2月頃です。急激に体調が悪くなって下血が止まらない。病院で検査すると潰瘍性大腸炎だと。入院までの10日間にみるみる悪くなった。3週間の入院中、最初の10日間は点滴だけで栄養をとり、1日に水は20ミリリットルほどしか飲めませんでした。

 

その後の不安

その後、退院しても、家でリビングとトイレを往復する生活です。当然、仕事にも行けない。

ちょうど、妻の妊娠が判明し、おなかは毎日大きくなるし、自分はこれから日常生活が送れるのかという心配がどんどん大きくなりました。

心配はいらだちになり、いらだちの後には不安が来て、最後に残るのは徒労です。

もっと重い病気で命の危険にさらされている人たちには、本当に申し訳ないけど、トイレを往復するだけで、ぐったり疲れるような状況だと、生きていることそのものが面倒になった。生きる気力をそがれるとは、こういう状態なのかと思いました。

それでも自殺は考えなかった。どうせ長くないのに、自ら死んでしまったら、妻や子供に対して無責任でしょう?

 

ただ、この病気はストレスが一番良くないとされているのに、病気への向き合い方が見つからない。心療内科では安定剤や睡眠導入剤を処方されただけで、飲むと胃腸の調子が悪くなりました。生涯、難病と付き合う患者に対して、もっと相談の体制があってもいいと思います。

クローン病のほとんどの患者さんが、一生のうちに一度は、外科手術が必要になると言われてきました。近年の治療の進歩により、将来は、手術をする患者さんが減ってくる可能性があります。多くの患者さんで、 寛解 導入は難しくなくなっていますが、症状が落ち着いていても、病気は進行すると言われています。治療を継続しつつ、定期的な画像検査などの病気の状態を把握することはきわめて大切です。 

クローン病(指定難病96) – 難病情報センター

 

「小説を書く」作業があってうれしい

小説を書き始めたのは、他に何もすることができないからです。毎日下血があるので、血の色というのはきれいだなと漠然と思うようになり、その感覚が伝わるような小説を書こうと思った。書き始めると、毎日やることがあるのがうれしかったですね。

入退院を繰り返し、多くの死を見てきた。

「おじいちゃん死なないで」と家族が泣き叫んでいる横で、他の患者には普通に夕食が配られ、もくもくと食べている。(死に逝(ゆ)く)当人や家族にとっては、死や病気はとても重大なことだけど、他人はどこか客観的で、自分と切り離さないと生きてはいけない。いやでも命とは何かを考えました。

4年前に初期の大腸がんも見つかり、抗がん剤治療も受けました。体の良い細胞も悪い細胞も壊れていく感覚です。もっともっときつい人もいる。末期がんで、それでも日常を前向きに過ごす人もいる。人間のすごさを感じざるを得ませんでした。

自分も、いつ死ぬか分からない。死に対してネガティブにもポジティブにも考えず、ただそこにあるものとして捉えています。小説を書くことで何かが形になり、それが社会との関わりになり得る。家の前に盆栽を並べる老人のような気持ちに近い。

50年近く生き、これまでは短気で怒りっぽいところがあったけど、もし後半生があるなら、仏のように穏やかでいたい。日々、そんな自分になれるよう努力しています。

 

【プロフィル】長浦京

 ながうら・きょう 昭和42年、埼玉県生まれ。法政大卒。出版社勤務などを経て放送作家。平成23年、辻斬りをテーマにした処女作『赤刃』で小説現代長編新人賞を受賞。次作の関東大震災後の東京を舞台にしたハードボイルド『リボルバー・リリー』で今年、大藪春彦賞を受賞した。5月から専業作家となり、6作の小説執筆依頼を受けている。

「痛みがひどいときは、泣いても笑っても一緒。ただ、そういうものだと受け入れるしかない」と話す長浦京さん=東京都文京区

 

www.sankei.com