認知度は低いかもしれない。
20代~30代で発症する人が多く、女性に多い疾患。
結婚・出産というライフイベントを考慮する時期と重なり、かつては仕事や出産などをあきらめる人も多かった。
現在は、治療法が進歩してきた。あきらめずに日常生活を送る人も増加している。
また、当事者同士で語り合える場が増え、生活の工夫や今後の治療への支えになることも多い。
下記に、患者の声を紹介したい。
- 多発性硬化症とは
- 1. 「多発性硬化症」や「視神経脊髄炎」とはどのような病気ですか
- 2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
- 3. この病気はどのような人に多いのですか
- 4. この病気の原因はわかっているのですか
- 6. この病気ではどのような症状がおきますか
- 9. この病気はどういう経過をたどるのですか
- 10. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
多発性硬化症とは
「難病情報センター」より抜粋
1. 「多発性硬化症」や「視神経脊髄炎」とはどのような病気ですか
私達の神経活動は神経細胞から出る細い電線のような神経の線を伝わる電気活動によってすべて行われています。
家庭の電線がショートしないようにビニールのカバーからなる絶縁体によって被われているように、神経の線も髄鞘というもので被われています。この髄鞘が壊れて中の電線がむき出しになる病気が 脱髄 疾患です。
この脱髄が斑状にあちこちにでき(これを脱髄斑といいます)、病気が再発を繰り返すのが多発性硬化症(MS)です。
MSというのは英語のmultiple sclerosisの頭文字をとったものです。
2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか
MSの頻度は人種によって違います。
MSは欧米の白人に多く、北ヨーロッパでは人口10万人あたり100人以上の患者がいる地域もあります。高緯度地方ほど患者の割合が多いことが知られています。
わが国では比較的まれな疾患で、 有病率 は10万人あたり1~5人程度とされていましたが、最近の各地での 疫学調査 や2004年全国臨床疫学調査などによれば、8~9人程度と推定され、約12,000人の患者がいると推定されています。
このことは遺伝子の違いがその頻度に大きく影響していることを示していますが、この他に、環境因子の関与も考えられます。
環境因子としてはEBウイルスなどの感染因子、緯度や日照時間、ビタミンD、喫煙などが知られています。
3. この病気はどのような人に多いのですか
MSは若年成人に発病することが最も多く、平均発病年齢は30歳前後です。15歳以前の小児に発病することもありますが、5歳以前には稀です。
また、60歳以上の方がMSを発病することは少ないですが、若い頃MSに罹患していて、年をとってから再発をすることもあります。
MSは女性に多く、男女比は1:2~3位です。
4. この病気の原因はわかっているのですか
MSになるはっきりした原因はまだ分かっていませんが、自己免疫説が有力です。私達の身体は細菌やウイルスなどの外敵から守られているのですが、その主役が白血球やリンパ球などですが、これらのリンパ球などが自分の脳や脊髄を攻撃するようになることがあり、それがMSの原因ではないかと考えられています。
このことにより、先ほど述べた髄鞘が傷害され(脱髄)、麻痺などの神経症状が出るのです。なぜ自分の脳や脊髄を攻撃するのかはまだ分かっていませんが、遺伝的な因子と、先ほど述べた環境因子が影響していると考えられています。
5. この病気は遺伝するのですか
MSやNMOでは、親から子に病気が遺伝することはありません。ただ、アレルギー体質が遺伝するように、MSやNMOになりやすさを決定する体質遺伝子が遺伝することはありえます。
このなりやすさを決定する遺伝子として色々なものが上げられていますが、今のところ ヒト白血球抗原 (HLA)という遺伝子が重要であると言われています。
私達の赤血球にはA型、B型、O型といった血液型があるように、白血球にも血液型があり、その一つがHLAです。欧米白人や日本人でもDR2というHLAのタイプを持っている人は、MSになりやすいと言われています。
6. この病気ではどのような症状がおきますか
MSやNMOの症状はどこに病変ができるかによって千差万別です。
視神経が障害されると視力が低下したり、視野が欠けたりします。この症状が出る前や出ている最中に目を動かすと目の奥に痛みを感じることがあります。
脳幹部が障害されると目を動かす神経が麻痺して、
ものが二重に見えたり( 複視 )
、目が揺れたり(眼振)、
顔の感覚や運動が麻痺したり、
ものが飲み込みにくくなったり、
しゃべりにくくなったりします。
小脳が障害されるとまっすぐ歩けなくなり、ちょうどお酒に酔った様な歩き方になったり、手がふるえたりします。
大脳の病変では手足の感覚障害や運動障害の他、 認知機能 にも影響を与えることがあります。
ただし、脊髄や視神経に比べると脳は大きいので、病変があっても何も症状を呈さないこともあります。脊髄が障害されると胸や腹の帯状のしびれ、ぴりぴりした痛み、手足のしびれや運動麻痺、尿失禁、排尿・排便障害などが起こります。
脊髄障害の回復期に手や足が急にジーンとして突っ張ることがあります。これは有痛性 強直性 痙攣といい、てんかんとは違います。
熱い風呂に入ったりして体温が上がると 一過性 にMSの症状が悪くなることがあります。これはウートフ徴候といいます。
一般に同じ目や手足の症状でも、NMOにおける再発ではMSに比べより症状が 重篤 になることが多いです。さらにNMOでは、MSではほとんどみられない、吃逆、嘔吐、傾眠などが出現することもあります。
中略
9. この病気はどういう経過をたどるのですか
通常型MSの多くは再発・ 寛解 を繰り返しながら慢性に経過します。
一部のMSでは最初からあるいは初期に再発・ 寛解 を示した後、しだいに進行性の経過をとる場合があります(一次性および二次性進行型MS)。
再発の回数は年に3~4回から数年に1回と人によって違います。
再発を繰り返しながらも障害がほとんど残らない患者さんがおられる反面、何度か再発した後、時には最初の発病から寝たきりとなり、 予後 不良の経過をとる患者さんがおられますので、MSの診断がついたらなるべく早く再発予防のための治療薬を開始するよう勧められています。
一方、NMOでは進行型を呈する方はほとんどなく、再発型とされています。NMOの再発は視力障害や脊髄障害などの症状が 重篤 になることが多いため、出来るだけ再発予防の治療を行うよう勧められています。
10. この病気は日常生活でどのような注意が必要ですか
過労やストレス、感染などは再発の危険因子とされていますので、可能な範囲で避けた方が良いと思います。
また、体温が高くなると調子が悪くなるウートフ徴候が出ることがありますので、そのような場合には高い温度の風呂やサウナは避けた方が良いと思います。
ただ、あまり神経質にならない方が良いと思います。
また、使用する薬剤により日常生活の注意すべき点が異なりますので、主治医によくお聞きください。
多発性硬化症/視神経脊髄炎(指定難病13) – 難病情報センター
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