東京都健康長寿医療センター研究所・福祉と生活ケア研究チームが、
「これからの治療選択を迷っている方へ」を発行しました。
治療が成功して元の生活に戻れることは、患者にとっても医療者にとっても喜びです。
しかしながら、高齢になればなるほどそうではないことが増えてきます。
目標は元に戻ることではなく、限界のある中で自分らしく暮らせることにシフトします。
「治らない」という言葉は、医療が何もできないという意味でも、見捨てるという意味でもないのです。
医療は、病気を治すことだけでなく、病気や障害がある中で自分の暮らしを作る時のお手伝いをする役割もあります。
病気がないことがいいことなのではなく、病気があるけれどもうまく暮らしていけることが目標です。
そうして考えていくと、自分にとって必要な治療、不要な治療が見えてくるのではないでしょうか。
自分はこのように生きていきたいからこの治療を選ぶ、このように生きたくないからこの治療は選ばない、というように。
人はいつかは最期を迎えます。
「死に方」は選べませんが、最後に向かう「生き方」を選ぶことができます。
私たちが選択できるのは最期に向かう「生き方」です。
あなたはどのような生き方を選択しますか?そのためにどのような治療を選択しますか?
医学の進歩に伴って病気の治療法が多様化し、患者や家族が迷う場面が増えてきている。
迷った時の参考に読みたいパンフレットを以下に紹介する。
- 患者さんの意思を第一に考えたい
- 治療にあたっては目標や希望が大事
- 家族とこの先のことを話し合っておいてほしい
- 治療に伴う苦痛を減らしたい
- 自宅や家族の状況に合わせて、患者さんの治療を選択したい
- 自分らしい暮らしをあきらめないでほしい
患者さんの意思を第一に考えたい
医療者はm患者さんが今後どのような生活を送りたいのかは分かりません。
▶医療者に患者の思いを伝える
思いを言葉にすることは難しい作業です。
治療を受けながら思っていること、感じていることを医療者に伝えるよ
うにしましょう。対話の中で自分の思いが整理されることもあるのです。
自分自身の思いを分かってもらうには、時間がかかります。定期的に診
てもらえるかかりつけ医に普段から思いを伝えておくとよいでしょう。
治療にあたっては目標や希望が大事
健康が損なわれると、以前できていたことができなくなります。
・何かやるにしても億劫になってしまった。
・趣味の集まりに顔を出す機会が減ってしまった
・体力が落ち、家の掃除がおざなりになった
そうした自分の衰えを目の当たりにして気分が落ち込み、意欲がさらに
落ちる悪循環に陥ってしまいます。
▶医療者と患者が共通理解する
病気が完全に治るわけではなくても、病気とうまく付き合いながら治療
と同時並行で、生活することができます。大事なのは医療者と患者さんとで今の状態を共有し、患者さんに
とっての生活上の目標を持つこと。
「病院内の売店まで一人で歩いて新聞を買ってこれるようになる」
「趣味の盆栽いじりを再開したい」
など、小さなものでかまいません。
目標をひとつひとつ達成していくことで生活に張りが出ます。
積み重ねていけば生活の質が向上します。
家族とこの先のことを話し合っておいてほしい
患者・家族・医療者の話し合いが大切。
自分が大病を患っていると分かった時、ほとんどの人はショックを受け
ます。そして身内が病気であることを知り、家族もショックを受けます。
不安な気持ちを医療者に伝え、聞いてもらいましょう。そして家族も不安
な気持ちがあれば、一緒に医療者に相談しましょう。
言葉にしていけば、気持ちを整理できる。
▶治療の経過で家族にできること
家族には、家族の生活があります。家族の生活を犠牲にして看病するこ
とで、それまでの関係性が失われてしまっては、双方にとって良くありま
せん。家族も無理せず、自分のペースを見失わないことが大切です。
家族の役割についても言及されている。
治療に伴う苦痛を減らしたい
痛みや苦しみは、個人によって受け止め方が様々で、どのように痛
いのか、何が苦しいのかを伝えないと、医療者には分からないことがたく
さんあります。痛かったり苦しかったりすることは、遠慮せず、どのようにつらいのか具体的な表現で医療者に伝えましょう。
痛みの部位を触ったり、はっきりしないときは少し広めの範囲を触れて伝える。
▶介護する家族の方へ
患者さんに生きていてほしい、という気持ちで選択した治療が、もしか
したら患者さんを苦しめている場合もあるかもしれません。
患者さんが苦痛を感じているサインについて書かれている。
もし回復の見込みが立たないのであれば、本当にその治療を続ける必
要があるのか、医療者に相談する選択も検討してみてください。
迷いはあると思います。医療者にもいろいろな考え方の人がいます。一番大事なのは、患者さんが「できるだけ苦痛を感じないこと」。
そのために何をすればよいのかを、医療者と相談してみてください。
患者さんを助けることのできる治療以外の選択肢もあるはずです。
自宅や家族の状況に合わせて、患者さんの治療を選択したい
高齢・進行性の難病・身寄りのない一人暮らしなど、何が患者さんのためになるのか判断がつかないことがたくさんある。
医学的な基準だけで判断できることばかりではない。
医療者は「患者の意思」を大事にしたいと考えます。
ここで言う「患者の意思」とは、治療そのものに対する考えだけではないのです。
選択するのは、患者さんの暮らし方です。
何を一番大切にして、暮らしていきたいのか。
そしてそのために活用できる資源は何か。
医療者に「死を選択する」ことは許されていません。
医療者にできるのは「生き方を選択する」ことです。
時にはつらい選択も含まれていますが、人生は選択の連続です。
最期の過ごし方ですら、選択が迫られる時代になってきていると言えるでしょう。
自分らしい暮らしをあきらめないでほしい
生きている限り、生きる希望が必要です。
その希望とは、最後まで自分らしく生きること。
生きてきた結果として、人生を閉じること。
それを目標にしてもいいのではないでしょうか。
自分らしい暮らし方を選ぶ。
患者さん自身にしかできない。
「これからの治療選択に迷っている人とその家族の方へ」
(東京都健康長寿医療センター研究所)
https://www.tmghig.jp/research/release/cms_upload/71875e63582000df30916fbf8f9f5f56.pdf
まとめ
終末期になってから考えるのではなく、治療選択の段階からどう生きたいかを考えることが、より良く生きることにつながるようだ。