はじめに
かつて認知症の人や家族の多くは、根強い偏見のなか、地域で孤立していました。
しかし時代は変わり、本人が自らメッセージを発信し、住民や企業・行政が手を携えて一緒に暮らしていく地域をつくる動きが確実に広がっています。
そんな現場の取り組みを下記にまとめます。
「認知症と共に生きるまち」の未来を創りたい。
「常識の殻 破ろう」希望宣言
先月、「認知症とともに生きる希望宣言」が公表されました。
まとめたのは、認知症の本人が主体となる団体の先駆け「日本認知症本人ワーキンググループ」。
希望とは、特別なことでなく、一人ひとり自分らしく生きていく上での(ささやかな)望み・願い。
「自分自身がとらわれている常識の殻を破り、前を向いて生きていきます」「自分の力を活(い)かして、大切にしたい暮らしを続け、社会の一員として、楽しみながらチャレンジしていきます」など5項目を掲げています。
1. 自分自身がとらわれている常識の殻を破り、前を向いて生きていきます。
2. 自分の力を活かして、大切にしたい暮らしを続け、社会の一員として、楽しみながらチャレンジしていきます。
3. 私たち本人同士が、出会い、つながり、生きる力をわき立たせ、元気に暮らしていきます。
4. 自分の思いや希望を伝えながら、味方になってくれる人たちを、身近なまちで見つけ、一緒に歩んでいきます。
5. 認知症とともに生きている体験や工夫を活かし、暮らしやすいわがまちを、一緒につくっていきます。
リーフレットのPDF↓
http://www.jdwg.org/wp-content/uploads/2018/11/statement_leaflet.pdf
私たちは、認知症とともに暮らしています。日々いろんなことが起き、不安や心配はつきませんが、いろいろな可能性があることも見えてきました。一度きりしかない自分の人生をあきらめないで、希望を持って自分らしく暮らし続けたい。次に続く人たちが、暗いトンネルに迷いこまずに、もっと楽にいい人生を送ってほしい。私たちは、自分たちの体験と意志をもとに「認知症とともに生きる希望宣言」をします。この宣言をスタートに、自分も希望を持って暮らしていこうという人、そしてよりよい社会を一緒につくっていこうという人の輪が広がることを願っています。
代表理事で、45歳でアルツハイマー病と診断された藤田和子さん(57)は、
「これは理想ではなく、私たちが体験してきた苦しみや悲しみの先に見いだした希望です。偏見が根強く声を上げられない人や、全国の自治体など様々な人に届け、よりよい社会を一緒につくる人の輪を広げたい」。
窓口で宣言を紹介する自治体もあるそうです。公明党は9月に「認知症施策推進基本法」の骨子案を公表。同グループは、希望宣言を後押しする立法を期待しています。
本人・家族ら テレビ会議で交流
認知症フレンドリージャパンイニシアチブ(DFJI)
www.dementia-friendly-japan.jp
Zoomというインターネットのテレビ会議システムを使い、本人や家族らの新たな交流を始めています。「DFJI-Zoomカフェ」です。
www.dementia-friendly-japan.jp
このカフェの良さは? みなさんに聞いてみました。
39歳でアルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんは「顔が見える安心感」をあげ、「みんな友達。オーストラリアやカナダなど世界の当事者とも交流しています」と言います。
若年認知症の夫を支える女性は「ここで初めて同じ境遇の人に出会えた。すごく心強い場所」。末期がんの母を介護するベッド脇から参加していたという女性は「『カフェ』がいやしでした」と振り返ります。
進んだ取り組みの知恵を支援者らが共有したり、イベントの打ち合わせに使ったりもしているそうです。
東京都・町田Dサミット
「なかまある」でも報告しています。
認知症の人や家族が安心して暮らせる地域であるためには、何が必要なのか。
当事者だけでなく、様々な分野の先駆者が集まって話し合う催し
Dは認知症を意味する英語「Dementia」の頭文字。
「認知症にやさしいまち」のイメージを具体的に持ってもらおうと、
市が初めて企画しました。
社会とつながりやすく
「しごと」「交通」「金融」など九つの分科会では、
駅長、コーヒー店マネジャーら約30人が取り組みを語り、意見を交わしました。
「金融」の分科会では地元の郵便局長の杉山勲さんが、頻繁に通帳の再発行を求めるなど認知症が疑われる場合に対応できるよう、市内34局の職員全員が認知症サポーターを目指していると話しました。すでに約180人が受講、わかりやすい言葉で説明するなどの工夫で困り事の頻度が減ったそうです。
「交通」の分科会では、職員が認知症の人を見守る英国のバスターミナルや、ホームで「駅カフェ」を開くなど外出を楽しんでもらう京都市左京区の取り組みなどの先進例が紹介されました。
自分のこととして行動
また「認知症にやさしい」というイメージが人によってバラバラにならないようにしようと、当事者や様々な分野の人の意見を聞き、16の文章からなる
「まちだアイ・ステートメント」を昨春つくりました。
アイステートメント 町田市(東京都) | 認知症未来共創ハブ
認知症未来共創ハブによくまとめられています。
以下抜粋です。
まちだアイ・ステートメント
1 私は、早期に診断を受け、その後の治療や暮らしについて、主体的に考えられる。
2 私は、必要な支援の選択肢を幅広く持ち、自分に合った支援を選べる。
3 私は、望まない形で、病院・介護施設などに入れられることはない。望む場所で、尊厳と敬意をもって安らかな死を迎えることができる。
4 私は、私の言葉に耳を傾け、ともに考えてくれる医師がいる。
5 私は、家族に自分の気持ちを伝えることができ、家族に受け入れられている。
6 私の介護者は、その役割が尊重され、介護者のための適切な支援を受けている。
7 私は、素でいられる居場所と仲間を持っており、一緒の時間を楽しんだり、自分が困っていることを話せる。
8 私は、趣味や長年の習慣を続けている。
9 私は、しごとや地域の活動を通じて、やりたいことにチャレンジし、地域や社会に貢献している。
10 私は、認知症について、地域の中で自然に学ぶ機会を持っている。
11 私は、経済的な支援に関する情報を持っており、経済面で生活の見通しが立っている。
12 私は、地域や自治体に対して、自分の体験を語ったり、地域への提言をする機会がある。
13 私は、認知症であることを理由に差別や特別扱いをされない。
14 私は、行きたい場所に行くことができ、気兼ねなく、買い物や食事を楽しむことができる。
15 私は、支援が必要な時に、地域の人からさりげなく助けてもらうことができる。
16 私たちも、認知症の人にやさしいまちづくりの一員です。
※この文章における私とは、現在、認知症である私と、そして、これから認知症になりうる私を指します。認知症の人にやさしいまちに関する16の文章は、認知症という体験を、既にした人、これからする可能性のある人、それそれがジブンゴトとして捉えた時に、目指すべき地域・社会の姿を文章にしたものです。
引用文献
(森本美紀さん記事)
まちだDマップ - まちだDマップ 認知症フレンドリーコミュニティまちだ