はじめに
認知症になっても地域社会の中で、役割を持ち安心して生活できるようにするためには、どのような実践がなされているのでしょうか?
実現するためには地域社会が認知症への理解を深め、病院や福祉施設との連携を図ることが欠かせない。
いくつかの実践を下記に報告します。
認知症カフェについて
❶ 認知症カフェとは何か?
認知症カフェは、オランダで始まったアルツハイマーカフェを源流として世界各国に様々な形で広がっていきました。日本では、2012 年の認知症施策推進 5 か年計画(オレンジプラン)にて初めて明記され、続く認知症施策推進総合戦略(以下、新オレンジプラン)では、全市町村設置を目指すことが示されました。
新オレンジプランでは、「認知症の人の介護者の負担を軽減するため、認知症初期集中支援チーム等による早期診断・早期対応を行うほか、認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う認知症カフェ等の設置を推進する。」とされ、家族支援と初期の認知症の人の支援の場となることも想定されています。
また、運営には、認知症地域支援推進員や、地域密着型サービス事業所など様々な人や場所が想定されています。その数は、2017 年末時点5800 カ所以上が開催されているとされていますが、様々な人が様々な形で運営をしていることから、実際にはもっと多くの認知症カフェが日本には存在しているものと思われます。このように、認知症カフェは加速度的にそれぞれの形で増加しているために、認知症カフェとは何か?と問われるとひと言で表現することが難しい状況です。このような状況は、地域の理解を得られないことになってしまう恐れがあります。
そこで、この事例集を作成するうえで、次のように認知症カフェを考えていきたいと思います。
認知症カフェは、認知症の人、家族介護者や友人、地域住民、そして専門職が、年齢や所属、地域に関係なく身近で入りやすい場所で開催されます。内容は、会話と対話によって人と人との繋がりが醸成され、そして常に認知症に関する情報を得ることができます。
社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センターの資料より抜粋。
認知症カフェの現状
全国で5863か所で運営されている。
活動内容として、
テーマを決めて意見交換する認知症の本人や介護者の「ミーティング」の実施(9%)。
運営上の課題として
認知症の人が集まらない(77%)。
「認知症の当事者が疎外感を抱き、本音をさらけ出せないことも多い」と指摘。
「充足感を感じながら穏やかな生活を送るにはどうすればいいか。当事者や家族の視点に立った施策を進める必要がある。」
産経新聞より抜粋。
認知症カフェの実践
よくわかる地域が広がる認知症カフェ
より。
1 地域住民との協働で継続している認知症カフェ
永山南きづなカフェ(北海道旭川市)
オレンジカフェ上京(京都府京都市上京区)
西門ちゅうちゅー喫茶 ノスタルジー(神奈川県相模原市中央区)
2 アクセスがあまり良くない地域で運営する認知症カフェ
ほっこりか ぇ(山形県鶴岡市)
美里カフェ(福島県会津美里町)
M カフェ(山形県天童市)
ひだまりカフェ ロックガーデン(埼玉県飯能市)
3 人口が少なく高齢化率が高い地域で運営する認知症カフェ
げらげら出前カフェ(高知県梼原町)
田野畑村認知症カフェ 白樺カフェ他(岩手県田野畑村)
カフェ まちなか(北海道上砂川町)
かようカフェ(秋田県小坂町)
おれんじカフェ(宮崎県日之影町)
4 都市部で集合住宅が多くある地域で運営するカフェ
認知症カフェ ゆいの広場 ら・らら(神奈川県横須賀市)
カフェ イースト(東京都板橋区)
たんぽぽカフェ(東京都渋谷区)
5 施設でも地域と連携して運営する認知症カフェ
のぞみカフェ(広島県廿日市市)
すみれカフェ“つどい”(認知症カフェ)(東京都多摩市)
オレンジカフェ(大阪府和泉市)