はじめに
AYA世代(15歳~39歳)のがん治療は、中年以降の患者と比べると、治療の改善が遅く研究も遅れがちといわれていた。
現状を報告したい。
AYA世代の治療のリアル
男子高校2年生。
風呂場で陰嚢が大きくなっていることに気づいていたが、「自然に治るかな」と放っておいた。3か月後には激痛に襲われ救急受診。
小児に多い「横紋筋肉腫」と診断された。
治療上、精巣機能が失われる可能性あり、生死を凍結保存した。
この時、中学3年生。
中高一貫校のため進学の心配はなかったが、「志望校から進学を渋られた」と悲しんだ。
高校進学後も抗がん剤治療を継続。
留年を避けるため、日程を調整。
遅刻、早退で出席日数を稼いだ。
試験終了後病院に直行した。
副反応あり(脱毛、顔面蒼白、味覚、臭覚異常など)
治療終了後部活動に入部。
自身の経験から、将来は看護師を目指している。
「今は普通が一番」とかみしめているが、再発の不安は時々襲ってくる。
血尿が出たときは、ネット情報をあさってしまった。
AYA世代治療の問題点
標準的ながん治療は、患者数の多い成人を中心に考えられている。
小児がん(一般的に15歳未満)も拠点病院ができ対策が進み始めた。
AYA世代は十分に医療がいきわたっていない可能性がある。
石田裕二小児科部長
具体的問題点
欧州チームの研究発表
小児もAYA世代も5年生存率は向上。
しかし
急性リンパ性白血病:小児86%、AYA56%。
横紋筋肉腫:小児67%、AYA38%。
比較的多い8種類のがんでAYA世代の生存率が低いと報告された。
AYA世代専門病棟の開設
整形外科と脳神経外科が協力した。
患者に集まってもらうことで
①医療者の経験を高める。
②データを蓄積し新たな治療開発につなげる。
③同様の取り組みをする病院との連携をめざす。
AYA世代治療目標
まず一番は、笑顔で社会に戻ってもらうこと。
そのためには、仕事や学業を継続するための支援。
職業支援
職場で立場が確立していない若い人は、がん告知を受けると辞表を出してしまいがち。
対策:治療当初からの休職から、会社との連絡を密にするように促す。
ソーシャルワーカーが交渉を手伝うこともある。
義務教育でない高校・大学に通う患者。
対策:留年せずに治療を続ける工夫の提案。
学校側の意見を聞く。